副葬品とは?棺に入れられるもの、入れてはいけないもの
2022.03.01
故人様とともに棺の中に納める品物である副葬品。故人様をしのぶ感謝の言葉や「向こうの世界に行っても、これで楽しんでね」「一人で旅立つ故人が寂しくないように」といった想いを込めた愛用品などが、副葬品として納められます。
副葬品に特別な決まり事はありませんが、棺の中に入れられるものと入れられないものがあるため注意が必要です。「せっかく用意をした品物が入れられない……」という事態だけは避けるべきでしょう。
そこで今回は、埋葬品として棺に入れられるもの、入れられないものなどについて解説するので参考にしてみてください。
そもそも副葬品とは
副葬品とは、故人様とともに棺に納める品物です。日本の葬儀は、ほとんどが火葬で行われるため、故人様の棺とともに燃やすものをさします。
そもそも副葬品とは、古くは死者を弔う場合や人が亡くなった後、故人様が必要とするものを共に埋葬する物品でした。昔の人は故人様が向こうの世界で困らないように、また復活を願って貴重な装飾品を埋葬していたそうです。
また、ネアンデルタール人の埋葬跡から花の化石が見つかったため、埋葬時に花を供えたものと考えられています。そのような昔の時代から、死者を弔う気持ちは変わらないことが推測され、この花も副葬品といえるでしょう。
副葬品を棺に入れるタイミング
副葬品を棺に入れるのは、以下2つのタイミングが一般的でしょう。
・納棺の儀式のタイミング
・出棺前にお花を納めるタイミング
副葬品を棺に入れる1回目のタイミングは、納棺の儀式を実施するときです。故人様のご遺体を棺に納める際に、故人様の衣服や手紙などの副葬品を一緒に納めます。手紙や写真は故人様のお顔の側に納めることが多いです。
副葬品を棺に入れる2回目のタイミングが、出棺前にお花を納めるときです。出棺時に棺花と呼ばれるお花を故人様のお顔やお身体の周りに納めるときに、副葬品も一緒に納めます。
副葬品を棺に入れるタイミングに決まりはありませんが、今回紹介した2つのタイミングで実施するケースが多いでしょう。なお、納棺の儀式の際、蓋を釘打ちする地域もあるため、事前に葬儀会社などに副葬品を納めるタイミングを確認しておくと安心です。
副葬品として棺に入れられるもの
副葬品としてよく準備されている品物は、お手紙や寄せ書き、故人様が好きだった食べ物や飲み物、衣服、写真などが挙げられます。棺に納めるときに注意するべきポイントもあるので、併せて確認しておきましょう。
手紙、寄せ書き(色紙)、メッセージカード
故人様へ宛てた手紙や寄せ書き(色紙)、メッセージカードは、副葬品として棺に納められることが多いです。ご家族やご親族の方々より、感謝や労いの気持ちを伝えます。
故人様への想いを伝えたい方が多い場合には、棺の中を整理するためにも寄せ書きにするのがおすすめです。なお、言葉にすることがなかなか難しいときは、折り紙で折り鶴などを作る場合もあります。
故人様が好きだった食べものや飲みもの
故人様が好きだった食べものや飲みものも、副葬品としては一般的でしょう。
特に故人様が長い闘病生活を強いられていた場合は、満足に好きなものを食べられなかったというケースも多いと思います。そのため、葬儀のときに故人様が好きだった食べものや飲みものをお供えして、最後に棺の中に納める方が多いのです。
ただし、適度な大きさで燃えやすい飲食物であることが条件です。缶やプラスチックなど燃えない物に入っている飲食物は入れられないので、半紙に移し替えるといった工夫が必要でしょう。また、飲みものはそのままでは入れられないため、紙コップへ少量移し替えたり、口元を湿らせてあげたりもできます。水分を多く含む食品(果物など)は、切り分けるといった工夫が必要です。
故人様が愛用していた衣類(燃えやすい素材の物)
故人様が愛用していた衣類も、副葬品としてよく棺に納められます。ただし、燃えやすい薄手の素材であることが条件です。
病院や施設でお亡くなりになった故人様は、ほとんどが浴衣をお召しになった姿になります。その上から故人様が愛用していたお洋服を掛けることや、早い段階で葬儀会社に相談をすれば、着替えさせてもらうことも可能です。
仏教徒の場合は、お遍路様の姿にならって白装束の姿に着せ替えて、使用していた数珠があれば、その数珠を手に持たせます。ただし、形見として残しておきたい場合は、葬儀社に準備してもらった数珠を持たせましょう。また、お洋服だけに限らず帽子やマフラー・ストール、ハンカチなども選ばれます。
写真
故人様やご家族、知人などが写っている写真を副葬品として棺に納めます。趣味やスポーツなどで活躍されたときに記念として撮られた時の写真や、故人様が寂しくないように、先に亡くなられた方(親、兄弟、伴侶、ペットなど)の写真を入れたりすることが一般的でしょう。
ただし、まだ生きている方の写真を入れるときは注意が必要です。地域差はありますが「生きている人の写真を入れると、一緒に連れていかれてしまう」といういわれもあるため、事前にご本人に確認をとるようにしましょう。
副葬品として棺に入れてはいけないもの
副葬品として棺の中へ納めることが不適切な品物があります。どのような品物が該当するのか把握しておきましょう。
眼鏡、アクセサリーなどの貴金属類
眼鏡や腕時計、アクセサリーなどの貴金属類を、副葬品として棺の中へ納めるのはやめましょう。
「故人が普段愛用していたものを一緒に入れてあげたい」と思う気持ちは理解できますが、金属やガラスなど不燃物が使用されているため、棺には納められません。金属やガラスは火葬の際に燃え残りやすく、溶けた品物が遺骨を汚したり、火葬炉を損傷したりする可能性があるからです。
ただし、小物であれば骨壺に入れられますので、火葬場に持参しましょう。なお、故人様が使用していた眼鏡に関しては、火葬場によっては「1つだけならOK」という場合もあるようなので、事前に確認しておくことをおすすめします。
眼鏡は、お骨壷の中にお納めすることも御座います。
硬貨(お金)
硬貨(お金)も副葬品として棺には納められません。
そもそも金属である硬貨は燃えないため、火葬には適さないのですが、実はお金を燃やすという行為が法律で禁じられていることが本来の理由です。硬貨を燃やす行為は「貨幣損傷等取締法」という法律に抵触します。
一方、紙幣を燃やすことは違法ではありませんが、あまり好ましい行為とはいえないため、避けたほうがよいでしょう。
ゴルフクラブ、釣り竿、ゲートボール用品、杖
ゴルフクラブや釣り竿、ゲートボール用品、杖なども、副葬品として棺に入れる際には注意しなくてはいけません。なぜなら、これらには燃えづらい金属やカーボン素材が使われているケースが多いからです。
特にカーボン素材は炭素繊維が燃え切らずに微細な粒子となって散布され、火葬炉の故障原因になるので、副葬品として棺に納めないようにしましょう。
革やビニール製品、衣類、靴
革やビニール製品、衣類、靴などは燃えにくく、ときには遺骨に付着して汚してしまう場合があります。また、有害なガスを発生させることがあるため、副葬品として棺に納めることは控えましょう。
さらに、ビニールやプラスチック製品を燃やすと有毒な物質が発生する可能性があるため、副葬品には適しません。
厚みのある本やぬいぐるみ
厚みのある本やぬいぐるみも副葬品としては不適切です。辞書などの分厚い本や大きいぬいぐるみは燃えづらく、大量の灰が出るためそのまま入れることは控えましょう。
ただし、六曜の「友引」の日に葬儀を行う際には、友を連れて行くという慣習がまだまだ根強く残っている地域もあります。そのため、身代わりとして友引人形を入れるケースもあり得るでしょう。この場合、故人様が愛用していた人形やぬいぐるみを入れる必要があるので、事前に葬儀会社に相談する必要があります。
一般的に火葬場から禁止されているもの
遺骨の損傷や火葬場の施設の故障原因などになるため、副葬品として棺に納めることが禁止されている品物もあります。以下の条件を満たす可能性がある品物は、絶対に棺へ入れないようにしましょう。
遺骨損傷の原因となるもの
以下のように遺骨損傷の原因となる品物は、副葬品として棺へ納めてはいけません。
1:金属製品(携帯電話、携帯音楽プレイヤー、仏像など)
2:ガラス製品(ビン、鏡、食器など)
3:爆発物(缶飲料、化粧品スプレー、ライター、電池など)
可燃物でも燃焼の妨げになるもの
可燃物でも燃焼の妨げになる、以下の品物は副葬品として不適切です。
1:書籍(辞書、アルバムなど厚みのあるもの)
2:果物(スイカ、メロンなど水分を多く含む大きなもの)
3:大型繊維製品(大量の衣類、大きなぬいぐるみなど)
火葬炉設備の故障原因になるもの
火葬場の火葬炉設備の故障原因となる、以下の品物も副葬品として使用するのは避けましょう。
・カーボン製品(杖、釣竿、ゴルフクラブ、ラケット、竹刀、義肢装具など)
有害物質の発生源になるもの
CO2やダイオキシン、煙、ばいじん、臭気など、有害物質の発生源となる石油化学製品も副葬品として棺に納めてはいけません。
石油化学製品
1:ビニール製品(ハンドバッグ、靴、玩具など)
2:化学合成繊維製品(衣類、寝具、敷物など)
3:発泡スチロール製品(枕、緩衝材パッキンなど)
4.その他(CD、ゴルフボールなど)
棺に入れるものを判断するポイントと相談先
ここまで紹介した内容も踏まえ、副葬品の正誤を判断するポイントと、困ったときの相談先を紹介します。
副葬品として棺に入れるものを判断するポイント
副葬品として棺へ入れてよいか、いけないかを判断するポイントは以下の通りです。
・爆発や破裂、公害発生のリスクはないか
└ライターや缶ビール、ゴムやプラスチック製品など
・溶けて遺骨に付着、変色させるリスクはないか
└メガネや指輪など
・火葬炉が故障するリスクはないか
└カーボン製のゴルフクラブや釣り竿、杖など)
・火葬時間が長くなるリスクはないか
└分厚い書籍やぬいぐるみ、水分の多い果物など
・地域の慣習に反するリスクはないか
副葬品で困ったときの相談先
副葬品選びに困った場合は、葬儀会社か火葬場に相談しましょう。
前述した通り、副葬品には「これがNG」といった明確なルールが存在しません。そのため、副葬品として不適切であろう品物を判断するためのポイントを理解し、残された方々が判断する必要があります。
故人様を思う気持ちから、好きだったものや身の周りにあったものをたくさん納めようとする方もいらっしゃいますが、トラブルに発展する可能性があるため避けるべきです。したがって、副葬品として適切かどうか判断できない場合は、必ず葬儀会社か火葬場に相談しましょう。
故人様への想いを込める副葬品は適切な品物選びが重要
故人様とのお別れの際、副葬品を介して残されたご家族の想いを込められます。ただし、さまざまな理由から入れられない品物もあるので注意が必要です。
大切な故人様とご家族が悔いのないお別れができるよう、慎重に確認を行って選びましょう。