エンバーミングとは?処置の内容や目的、エンゼルケアとの違い、費用相場などをご紹介

2023.05.11

葬儀を行ったことがある方は、エンバーミングという言葉を聞いたことがあるかもしれません。エンバーミングは、故人様のご遺体に施す処置の1種です。

しかし、具体的にどのような処置を、何の目的で実施するかについては、知らない方がほとんどでしょう。そこで今回は、エンバーミングとはどのようなものなのか、処置の内容や目的、エンゼルケアとの違い、費用相場などをご紹介します。

エンバーミングとは

エンバーミングでは、ご遺体にどのような処置を施すのでしょうか。ここでは、エンバーミングの処置内容と実施する人、目的をご紹介します。

エンバーミング処置の内容

エンバーミングとはご遺体の長期間保存を可能にする技術で、日本語では「遺体衛生保全」と呼ばれるものです。

具体的なエンバーミング処置の内容は、ご遺体を消毒・殺菌した後、血液を防腐剤などと入れ替えることです。この処置により、ご遺体を衛生的に10~14日程度、常温で保存できます。そのため、故人様が亡くなってから葬儀までの期間が長い場合でも、腐敗の進行や臭いを抑制し、顔色も自然の状態に保つことができます。そのため、エンバーミングを行なったご遺体には、基本的にドライアイスや冷蔵庫を使用する必要がありません。

またエンバーミングでは、必要に応じてご遺体の損傷個所の修復も行います。そのため、ご遺体が以下のような状況の場合でも、極力生前に近い状態へ修復することが可能です。

・解剖されているご遺体
・点滴や薬の副作用で水泡ができているご遺体
・不慮の事故などで、通常であればお顔を見ることが困難なご遺体

エンバーミングを実施する人

エンバーミングを行なう人は、エンバーマーと呼ばれる有資格者です。IFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)の「エンバーマー資格試験」に合格した人だけが、エンバーミングを実施できます。

ただし、IFSAが認定する養成学校に通うことによって、受験資格を得ることが可能です。そのため、海外に留学してエンバーミングの技術を学びエンバーマーを目指す方法もあります。

また、資格にはランクがあり、下位から「アソシエイトエンバーマー」「エンバーマー」「アシスタントスーパーバイザー」「スーパーバイザー」という4段階があります。

参考:一般社団法人 日本遺体衛星保全協会/エンバーミングとは

エンバーミングの実施目的

エンバーミングの実施目的は、以下の通りです。

・ご遺体の尊厳維持
・ご遺族や関係者の公衆衛生上の安全確保
・ご遺体の長期保存

エンバーミングによって、ご遺体の外見を整え、故人とのよりよきお別れを実現できます。ご遺体からの感染防御を行い、感染症の原因となる病原菌やウイルスを消毒・殺菌することが可能です。また、ご遺体を衛生的に長期間(およそ10~14日)常温で保存できます。これにより、遠方からの参列者や故人の希望に応えられるでしょう。

亡くなってから葬儀までの期間が長い場合でも、故人様の腐敗の進行の払拭や臭いを気にすることなく、顔色も自然の状態を保てます。さらにエンバーミングによって、事故や病気などで損傷したご遺体の外傷や内臓を修復し、自然な姿へ戻すことも目的の1つです。

エンバーミングを選択する人が増えた背景

土葬が基本の国においては、ご遺体からの感染を防ぐことを主たる目的として、エンバーミングが行われてきました。日本であまり知られていない理由としては、火葬文化の国であるためです。故人様を長期間保存するケースが少なく、感染症防止の観点においても必要性がそれほどありません。

しかし近年、以下のような理由によって、エンバーミングを希望する方が増えています。

  • ご遺族が海外居住のため、短期間では葬儀に参列できない
  • 故人様が著名人や会社の役員などで、葬儀まで長期の準備期間が必要とされる

上記のような理由により、故人様を長期保存する場合や、火葬までの日数を必要とする場合などは、安心安全にご遺体の状態を維持できるエンバーミングによる処置が必要です。

なお、死後に現れるご遺体の変化については、以下の記事をご確認ください。

関連記事:死後の遺体処理とは?ご遺体の変化となくなってからの流れ

エンバーミングとエンゼルケアの違い

故人様の処置には、エンゼルケアという方法もあります。エンゼルケアとエンバーミングは混同されがちですが、それぞれ目的も処置範囲も異なるものです。ここでは、両者の違いを確認しておきましょう。

エンゲルケアの目的と処置範囲

エンゼルケア(死後処置)とは、人が亡くなったときに病院などで行なわれる処置です。おもに口腔・眼内ケア、開口への対応、全身保清、更衣などを行います。

エンゼルケアのおおまかな流れは、以下の通りです。

・点滴などの挿入物を抜き、傷があれば処置をします
・温タオル、または洗面器に湯を張り、濡らしたタオルで清拭を行います
└強く皮膚表面を傷つけないよう押さえ拭きで行い、清拭後は保湿ローションを塗布します
・洗髪、足浴を行います
・陰部洗浄の後、オムツを履かせて新しい着衣に着替えます

以前は身体の穴(耳、鼻、口、肛門など)に綿を詰めていましたが、近年は行わない施設も多いようです。ただし、臨終前から鼻出血が続いている場合などは、栓をする目的のため、一時的に綿を詰めることもあります。

エンバーミングとエンゲルケアの相違点

エンバーミングはエンゲルケアとは異なり、ご遺体の表面だけでなく体内まで処置を行ない、防腐・殺菌・感染症防止・修復をおもな目的とした処置です。

エンバーミングの一般的な処置の流れは、以下の通りです。

・専用施設に故人様を搬送します
・処置を行うテーブルにご遺体を安置します
・着衣を脱がして消毒液をスプレーし、全身に付着している微生物、病原菌の殺菌を行います
└このとき鼻腔内、口腔内などに詰めてあるガーゼは取り、消毒液で洗浄します
・安らかに眠っているように顔を整え、乾燥防止のクリームやオイルを塗ります
・右の鎖骨の上、もしくは左の太ももに2cmほどの切開を行います
・動脈からはエンバーミングの処置液を注入し、静脈は切開して血液を抜きます
└この作業によって、血液とエンバーミングの処置液を交換します
・薬液の注入中は、マッサージを行い血液の排泄を促します
・注入後、体液など腐敗の原因となるものをすべて取り除きます
・体腔内に、濃度の高いエンバーミングの処置液を入れます
・損傷している部位や怪我の修復を行います
・化粧と着付けなどを行って終了です

以上のように、エンバーミングとエンゼルケアは大きく異なる処置であることが、理解してもらえたかと思います。

エンバーミングが必要になる3つのケース

どのような状況の場合に、エンバーミングの実施を検討するべきでしょうか。ここでは、エンバーミングが必要になると思われる3つのケースについてご紹介します。

1.葬儀までの期間が長い場合

ご家族がなくなった後、何らかの事情によって葬儀までの期間が長くなる場合は、エンバーミングの実施を視野に入れるべきです。悲しいことですが、人は息を引き取った時点から腐敗が進行するため、見た目が劣化し寂しい表情に変化していきます。

ドライアイスや保冷庫を使用しても、凍結することではないため、腐敗の進行を抑えることはできますが完全に止めることはできません。そのため、葬儀まで長期の日数がかかってしまう場合には、見た目の維持や腐敗防止という観点からエンバーミングを施すのがおすすめです。

2.海外からご遺体を空輸する場合

葬儀までの期間が長引く可能性の1つが、海外からご遺体を空輸するケースです。

故人様のご遺体を航空機を使って海外から搬送する場合、安全上の観点によりドライアイスは使用できません。そのため、ご遺体の保全を目的にエンバーミングを施すべきです。また空輸時に、エンバーミングを必要条件と定めている国もあります。

3.故人様が元気だった頃の姿で見送りたい・見送られたい場合

ご家族やご親族が、故人様が元気だった頃の姿で見送りたい場合も、エンバーミングの実施は有効です。また故人様自身が、きれいな姿で見送られたいと望む場合も、やはりエンバーミングを実施したほうがよいでしょう。

点滴や薬剤の影響から顔が膨張したり、長い闘病生活から顔がやせ細ったりしてしまうこともあります。そのため、葬儀に参列するご親族や知人・友人がよく知っている故人様の姿とかけ離れている場合があることも否定できません。

そのような場合、ご遺族や故人様の希望を叶えるために、エンバーミングを施します。

エンバーミングの費用相場

エンバーミングの費用は15万円から25万円程度が相場です。ただし、故人様の状態によって費用は変動します。

また、エンバーミング処置を受けたご遺体は、通常の冷蔵庫ではなく、専用の冷却装置を備えた部屋に安置する必要があります。これにも別途費用が必要です。

エンバーミングは特殊技術のため、葬儀代とは別に費用の支払いが必要です。また、エンバーミングを取り扱っていない葬儀会社もあるため、ご希望の場合は事前に問い合わせることをおすすめします。

エンバーミング実施時の注意点

ご遺体にエンバーミングを施すときには、いくつか注意すべき点があります。

エンバーミングは、ご遺体の状態や環境によって効果が異なります。できるだけ早く行うことが望ましいです。またエンバーミングは、専門的な技術と知識を持ったエンバーマーに依頼する必要があります。一般社団法人日本遺体衛生保全協会に登録されているか、事前に確認しておくと安心でしょう。

なお、ご遺体にエンバーミングを施すためには、ご遺族の同意が必要です。エンバーミング処置の内容や費用、リスクなどを十分に理解したうえで、同意書にサインする必要があります。エンバーミングを実施する際には、ご遺体にメスを入れます。ご遺体の血液を抜き取り、防腐剤を注入するためです。これは、ご遺族にとって精神的な負担となる場合があります。

また、ご遺体の状態や処置の内容によって異なりますが、一般的には2時間から4時間程度の時間が必要です。その間、ご遺族は故人様とお別れできません。

まとめ

今回はご遺体の防腐処置・修復を行うエンバーミングについてご紹介しました。エンバーミングは、事情により故人様を長期保存する場合だけでなく「元気だった頃に近い姿で見送りたい」「心ゆくまでお別れをしたい」といった、ご遺族様の希望を叶えるための手段でもあります。

弊社が実施したアンケートにおいても「直近でご参列されたご葬儀において印象的だったこと(もの)は何ですか?」という問いに対して、1位「ご遺影」・2位「故人様の表情」という結果です。この2つの回答だけで全体の7割程度を占めています。

家族葬が増える近年においては、祭壇を華美にするご家族も少なくなりました。一方で、故人様への感謝の思いを込めてエンバーミングを選択することも、旅立つ家族にしてあげられる最後のお手伝いなのかもしれません。

横浜市や川崎市で葬儀を行う際には、実績豊富なお葬式の杉浦本店にご相談ください。横浜市、川崎市における多くの葬儀実績があります故人様やご家族、ご親族の気持ちに寄り添った葬儀プランをご提案いたします。

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