水子供養とは?水子の由来や供養の種類、内容、マナーなどをご紹介

2023.10.23

水子供養という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。しかし、具体的にどのような供養をさす言葉なのかを知らない方が多いことも事実でしょう。

そこで今回は、水子供養がどのようなものなのか、水子の由来や供養の種類、内容、マナーなどをご紹介します。

水子供養とは

水子供養とは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、水子の意味や由来、水子供養がどのようなものなのかをご紹介します。

そもそも水子とは

水子とは、母の体内に小さな魂を宿しながらも、流産や死産、中絶などによって、この世に生まれ出ることができなかった幼い命のことです。また、生まれることができたものの呼吸ができなくなったり、心肺停止になったりすることなどにより、わずかな時間で旅立ってしまった命も水子と呼ばれています。

水子の由来

水子の由来には諸説ありますが、古事記に記載された神話に登場する「伊邪那岐神(イザナギ)」と「伊邪那美神(イザナミ)」という神々の赤子が、由来の1つといわれています。

2人は赤ちゃんを授かったのですが、その赤子を見て、すぐ船に乗せて海へ流してしまいました。神話には、これを「我が産める子 良く非(あら)ず」と記されています。

そして、この赤子の名前は「水蛭子」と名付けられました。名前の1部である「蛭」は、動物に寄生して、血液を吸う動物です。蛭という字が使われているのかという理由は、2人の間に生まれた赤子が完全ではなく、手足が蛭のような姿、形をしていたのだと推察されます。
つまり、2人は「よくない子が生まれてしまった」と、赤子を海に流したわけです。

この神話に倣い、水蛭子の「蛭」を取り、水と子だけを残し「水子」と呼ばれるようになったとする説があります。また、このほかにも「元気な姿を見ずにして亡くなってしまった子」という意味から「見ず子」という説や、羊水とともに流れてしまったという意味から「水子」と呼ぶ説もあるようです。

水子供養とは何か

水子供養とは、お母さんの胎内に生命を受けたものの、流産や死産、中絶など、さまざまな事情によって、この世に生まれることができなかった命、もしくはすぐに亡くなってしまった赤子の供養です。つまり、この世に生を受けることができなかった子どもの冥福を祈るための供養だといえます。

「安らかに眠れるように」とお子さまの冥福を願い、祈りを捧げるのが水子供養で、日本独特の風習です。

水子供養の種類と内容

お地蔵様にお祀りするのが、一般的な水子供養です。水子供養には、大きく分けて2つの方法があります。1つはお寺に出向く方法、もう1つが自宅で供養する方法です。また、両方を行う方もいます。

ここでは、水子供養の種類とそれぞれの内容についてご紹介します。

お寺で行う水子供養

お寺で行う水子供養の内容は、おもに卒塔婆(そとば)供養、戒名授与、地蔵奉納、地蔵尊参拝の4つです。それぞれの内容を確認しておきましょう。

卒塔婆(そとば)供養

卒塔婆供養とは、お寺に相談して、水子のために卒塔婆を作成してもらい、読経により供養してもらう儀式です。卒塔婆とは、故人様の供養塔や墓標として作られた細長い板木のことをさします。

戒名授与

戒名授与とは、水子の戒名を付けて位牌を作る儀式です。位牌を作成することにより、参拝の対象になるため、子どもにいつでも手を合わせられるようになります。

地蔵奉納

地蔵供養とは、水子供養の象徴といえるお地蔵様を奉納する供養です。水子供養で有名なお寺で行われるケースが多く、奉納した後、お経を読んでもらいます。

地蔵尊参拝

水子供養を行っているお寺に出向き、水子が成仏できるように願うのが地蔵尊参拝です。お寺によって「護摩木」と呼ばれる木に名前を記入して奉納したり、小さな石に名前を記入したりするなど、内容は異なります。もちろん、手を合わせるだけでも充分な供養です。心が休まるまで、何度も通う人もいます。

水子供養のためのお地蔵様は、水子地蔵と呼ばれています。水子地蔵の種類は、以下の3つです。

・地蔵菩薩:子どもを鬼から救ってくれる、錫杖(さくじょう)を持つ水子地蔵
└錫杖とは、厄災や魔を祓う法具
・慈母地蔵尊:子どもたちの母親代わりとなる合掌をした水子地蔵
・地蔵尊(子安地蔵):安産を守ってくれる赤ちゃんを抱いた水子地蔵

個別供養と合同供養

お寺で行う水子供養には、個別供養と合同供養の2種類があります。

個別供養は、亡くなった赤子のために、お寺で一人ひとりに読経をしてもらう形式です。個別供養には事前予約が必要で、焼香して読経することで供養します。所要時間は40~50分程度が一般的です。

合同供養とは、複数の方が集まって行う供養のことで、一般的には年に数回行われます。参加者は、自分たちが供養したい水子の名前を紙に書いて持参し、法要中に読み上げられます。また、参加者全員で読経を行い、水子たちの冥福を祈ることが一般的です。

合同供養は、個別供養と比べると費用が安く済むため、多くの方々に利用されています。ただし個別供養とは異なり、自分たちだけで水子を供養できないため、その点は注意が必要です。

自宅で行う水子供養

自宅で行う水子供養としては、位牌供養、骨壺供養(お手元供養)、写経・写仏などが挙げられます。ここでは、それぞれの内容を解説します。

位牌供養

お寺から授かった戒名を位牌に刻み、仏壇などに祀るのが位牌供養です。仏壇がない場合は、部屋に小さなスペースを作り、お線香やおりんなどとともに、おもちゃなどを添えて供養します。

骨壺供養(お手元供養)

ご遺骨がある場合は、骨壺供養の実施が可能です。位牌供養と同じように部屋に小さなスペースを作り、お水やご飯、おもちゃなどを供えます。

写経・写仏

写経や写仏も、自宅で行える供養です。集中して手を動かすことや、水子供養のために行っているという気持ちによって、心に安らぎをもたらすでしょう。写経は経文を書き終えた後、「為〇〇水子供養」と書き足します。写仏は、水子供養の象徴であるお地蔵様の絵を下図にし、鉛筆で描き写した後、色塗りをします。

水子供養でお寺へ行くときのマナー

水子供養をお寺で行う場合には、服装や持ち物のマナーを守らなくてはいけません。また、僧侶へのお布施も必要です。ここでは、水子供養でお寺へ行くときのマナーをご紹介します。

服装のマナー

水子供養に出席する際の服装は、法要や法事の際と同じです。男性は控えめな色合いの黒やグレーのスーツ、女性は黒やグレーのワンピースやスーツがおすすめです。子どもの場合は、制服または地味な色の服装が適しています。

なお、実際には多くのお寺において、喪服を着用する必要はありません。ただし、法要中は礼儀正しい振る舞いが求められるため、露出度が高い服やカジュアルな印象が強い服装は避けましょう。

持ち物のマナー

水子供養の持ち物としては、黒または黒っぽいバッグにお布施、数珠、ハンカチを入れて持参します。また、携帯電話はマナーモードにしておきましょう。

なお、子どもを連れて水子供養に参加する場合は、事前に寺院に確認が必要です。一部の寺院では、子供の同席を制限している場合があります。水子供養は、子供を失った家族が参加する儀式のためです。

水子供養のお布施について

水子供養のお布施の一般的な相場は、3,000円~3万円程度といわれています。なお、実際には一霊につき1万円を渡すケースが多いようです。ただし、お寺によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。

お布施についての詳細は、以下の記事もあわせてご確認ください。

関連記事:『お布施とは?さまざまなマナーや黄白のお布施袋、封筒の選び方などについて解説』

関連記事:『お布施の書き方や入れ方(包み方)、渡し方を解説』

神奈川で水子供養が行えるお寺

基本的に水子供養は、神社ではなくお寺で行います。ただし、すべてのお寺が水子供養を行っているわけではないため、事前に問合せるのがおすすめです。ここでは、神奈川県で水子供養が行えるお寺を3つご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

長谷寺(はせでら)

 
鎌倉にある浄土宗のお寺である長谷寺は、紫陽花が有名で、観光名所としての知名度も高いです。地蔵尊像を申し込むと、翌朝に名前を読み上げて水子供養を行ってくれます。そのため、立ち会いの必要はありません。その後も、ご縁の諸霊として末永く供養してくれます。

また、長谷寺では毎日「写経・写仏」を行うことが可能です。書き終えた用紙を正面の三宝に納めることにより、毎年11月18日の写経清浄会で経蔵に納められます。

・住所:神奈川県鎌倉市長谷3-11-2

・電話番号:0467-22-6300

・参拝時間:通常期間8:00〜16:30(閉山17:00)

延長期間(4月〜6月)8:00〜17:00(閉山17:30)

参考:鎌倉 長谷寺

立江寺(たつえじ)

真言宗のお寺である横浜の立江寺でも、水子供養を行うことが可能です。本堂に水子供養専用の壇があり、境内には水子供養専用の蓮華池があります。本堂にて法要を行い、水子蓮華池で「千体地蔵流し」を行います

千本地蔵流しとは、地蔵菩薩の御影が描かれた小さな紙を「おん かかか びさんまえい そわか」と唱えながら、1枚1枚川に流して行う供養です。

地蔵菩薩の真言は、「おん かかか びさんまえい そわか」です。「おん」は「供養」、「かかか」は「笑い声」、「びさんまえい」は「稀有な」、「そわか」は「成就あれ」を意味します。

・住所:横浜市保土ケ谷区権太坂3丁目20-21

・電話番号:045-713-5029

・参拝時間:9:00~17:00

参考:横浜 立江寺

楽音山 泰心寺(たいしんじ)

天台宗のお寺である楽音山 泰心寺は、ごく普通の民家を手直しして作られたこぢんまりした小さなお寺です。尼僧(女性)が対応してくれます。

粘土(陶芸)でつくるお地蔵様で「お手元供養」として供養できます。水子供養の法要後、当日(完全予約制)にお地蔵様をつくることが可能です。

・住所:神奈川県横浜市瀬谷区三ツ境48-1

・電話番号:045-362-7181

・参拝時間:9:00~17:00

参考:楽音山 泰心寺

最後に

「いつまで水子供養を続けるのか?」「いつ供養はやめるべきなのか?」など、水子供養に期限はありません。赤ちゃんのことを考え、手を合わせることも立派な水子供養です。ご自身の心が落ち着くまで、供養を続けるのがよいでしょう。

水子供養をするにあたって一番大切なことは、子どもの幸せを祈り、いつまでも忘れないでいることです。形式にとらわれず、自分にとって無理のない方法で供養してあげてください。