神道の葬儀における祝詞とは?意味や要素、神葬祭についても解説

2022.10.05

神道(しんとう)の儀式では、祝詞(のりと)と呼ばれる言葉が紡がれます。神道を信仰しない方にとっては、ほとんど馴染みのないものだといえるでしょう。

祝詞は尊い存在と対話する言葉といわれており、さまざまな意味が込められています。今回は祝詞がどのようなものなのか、意味や要素なども掘り下げながら解説するので、見識を深めてみてはいかがでしょう。

神道とは

神道とは、仏教と同じく古来より日本で信仰されている宗教です。神道は仏教とは異なり、日本独自の宗教で、国家形成にも影響を与えたといわれています。

神道の特徴は、アニミズムと呼ばれる自然界のさまざまなものに宿る神を信仰することです。そのため、神道には教祖や開祖はもちろん、経典すら存在しません。

神道では、古事記や日本書紀などの神典と呼ばれる書物が、経典の代わりです。また、神道には多くの儀式が存在し、その中で祝詞が読まれます。

神道の死生観

神道の死生観(生と死への考え方)は、人は死後、祖先の元へ還り、日本に住む子孫を未来永劫見守り続けるという、永遠の霊魂といえる考え方です。

神道では祖先を崇拝することが基本であり、氏族の始祖である氏神が信仰の対象とされています。神である祖先から生まれた子孫は、死後神々の下へ還るものとされており、極楽浄土や天国などへ召される仏教やキリスト教とは死生観が大きく異なる点は特徴です。

また、我が国、我が家を見守り続ける祖先に対し、子孫たちはさまざまな祭りや儀式を行っって敬います。

神道の葬儀

神道の葬儀は神葬祭(しんそうさい)と呼ばれ、仏式のお通夜やお葬式に該当します。

神道の葬儀は、仏式やキリスト式の葬儀とは異なり、決まった形式はありません。そのため、地域や信仰対象などによって、式次第が大きく変わってきます。実際に葬儀を行う際には、葬儀会社へ相談すると安心です。

神道において人は死後、神になるといわれているため、神葬祭では故人様を祀る形となります。

神道における祝詞とは

神道の儀式で、尊い存在に対して寿ぎ(ことほぎ)申し上げる言葉が祝詞です。神社本庁では、祝詞を以下のように定義しています。

祝詞とは、祭典に奉仕する神職が神様に奏上する言葉であり、その内容は神饌・幣帛へいはくを供えて、御神徳に対する称辞たたえごとを奏し、新たな恩頼みたまのふゆを祈願するというのが一般的な形といえます。

出典:神社本庁/祝詞について

神道の祝詞では何を話しているのか?

日本古来の宗教である神道は、仏教が伝来するまでは神道という言葉すらなく、仏教に対する言葉として発生しました。日本人が持つ根源的信仰から生まれた祝詞は、祭典に奉仕する神職が神様に奏上する言葉です。

祝詞が読まれる儀式では、神饌(しんせん)、幣帛(へいはく)を供え、御神徳に対する称辞(たたえごと)を奏し、新たな恩頼(みたまのふゆ)を祈願するのが一般的な形といえます。

祝詞の歴史は非常に古く、記紀神話(古事記、日本書紀)にも天の岩屋(あまのいわと)の段で、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が隠れた天の岩屋の前で、天児屋命(あめのこやねのみこと)が「布詔戸言(ふとのりとごと)」を奏上したことが確認できるそうです。また「延喜式(えんぎしき)」巻八には、現存する最古の祝詞として朝廷の祭儀に関わる27編の祝詞が収録されており、現在でも重要視されています。

日本は「言霊の幸う国(ことだまのさわうくに)」と称されるように、言霊に対する信仰が見られる点は特徴です。言葉には霊力が宿り、口に出して述べることによって、霊力が発揮されると考えられています。

例えば、忌み嫌われる言葉を話すと良くないことが起こり、逆に祝福の言葉で状況が好転するというもので、婚儀など祝儀の際、忌み言葉を使わぬように注意するのは、こうした考えによるものだそうです。言霊に対する信仰が祝詞の根底にあるため、流麗で荘厳な言い回しを用いて、間違えることがないよう慎重に奏上されます。

祝詞の構成要素

祝詞を構成する要素は、大きく次の3つです。

・冒頭の表現(首部):一般的に「かけまくも~と」始まる部分
・核心部の表現(幹部)
・結びの表現(尾部):一般に「かしこみかしこみもまをさく~」と終わる部分

このうち、冒頭の表現と結びの表現は手紙で書きだし、時候の挨拶を拝啓、前略を用いて結びに敬具や草々を使うように表現が定型化されています。これに対して核心部は、おおよその定型はありますが、その時々によって流動的に作文する場合が多いようです。

●核心部の表現
・冒頭句:祭神を憚るもので、慎み恐れ入っている状態
・神名句:称賛込めて神の名を唱える
・神前句:慎みを籠めて神前を唱える
・奏上句:神に申し上げる旨を遜って述べる
・神徳句:祭神のお働き、おかげ
・崇敬句:依頼者(祈願する当人)が信仰する様子
・感謝句:神徳(祭神の働き、お蔭)に感謝する
・依頼者句:依頼者の氏名
・参上句:依頼者が神前に参上した由を述べる
・由縁句:祭礼の由来を述べる
・献供句 神饌、幣帛の献供(けんく)を唱える
・奉仕句:神職、依頼者が祭神にお仕えしている様子を述べる
・奉告句:神徳によって得られた結果を謹んで報告申し上げる
・装飾句:社殿、神域の清掃、装飾を唱え、神迎えの整ったことを申し上げる
・拝礼句:拝礼の所作を述べて祭神を敬う
・祈願句:依頼者の切なる願い
・神意句:(神葬祭祀では神霊句)神または霊を慮る(おもんばかる)
・嘉納句:神または霊の嘉納について申し上げる

以上の区遍を、宣命書きで奉書紙に毛筆で記します。

よくある祝詞の事例は、以下の通りです。

●冒頭の表現
掛けまくも畏き 

●神名句
伊邪那岐大神 筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊ぎ祓へ給ひし時に 生り坐せる祓戸の大神等

●神前句、由縁句
〇月〇日○○ホールを斎庭とし○○ ○○命の前夜祭仕え奉る 斎主を始め親族家族、諸人共が

●奏上句、祈願句、嘉納句
諸々の禍事・罪・穢 有らむをば 祓へ給ひ清め給へと 白すことを聞こし召せと

●結びの表現
恐み恐みも白す

直訳すると「偉大な伊邪那岐大神さまが禊されたときに生まれた、尊き祓いの神様達、今日○○ホールで○○ ○○様の前夜祭を行います。この儀式に相応しく、会場に集える全員に良くないことが起こらぬようお清めください」となります。

神葬祭で読まれる祝詞

神葬祭でよく読まれる祝詞を紹介します。今回は、遷霊祭と葬場祭、火葬祭の事例です。

遷霊祭で読まれるおもな祝詞

遷霊祭で読まれるおもな祝詞には、以下のようなものがあります。

・祓詞(はらえことば):開式に際し、その場、物、人を清めるための事上げの祝詞
・招魂詞:遊離し躰から離れてしまった魂を霊璽に招く祝詞
・安定詞:霊璽に鎮まってもらうための祝詞
・遷霊斎詞:霊璽(れいじ)に鎮まる魂に、なぜ招いたのか伝えるための祝詞

遷霊祭は、通夜祭や前夜祭とも呼ばれる、本葬(葬場祭)の前に遊離されたとみなされる、故人様の御霊を招魂する儀式です。霊璽へ御霊を遷霊することから、遷霊祭と呼ばれています。

遷霊祭は霊璽の考え方が伝わったもので、神霊は夜間に移動すると伝わる故事から、夜間に実施されることが一般的です。ちなみに、映画『もののけ姫』のシシ神が、夜にデイダラボッチとして歩き回り、朝日に伴い森へ帰る姿が描かれていたのはこのためでしょう。

葬場祭で読まれるおもな祝詞

葬場祭で読まれる主な祝詞は、以下の通りです。

・祓詞
・葬場斎詞(誄詞):故人様の来歴、功績を讃えて哀悼する詞
・葬場祭:本葬、神葬祭と呼ばれ、葬儀を表す

葬場祭は前夜より鎮まる魂を前に葬儀を行って、家の鎮め守護神として永遠を共にするためのお祭りといわれています。

火葬祭で読まれるおもな祝詞

火葬祭で読まれる祝詞は、おもに以下の2つです。

・祓詞
・火葬斎詞:火葬場の火葬炉を前で読まれる祝詞

火葬際とは、御霊が体に留まらず、滞りなく火葬が行えることを願う儀式です。

まとめ

神道における祝詞は、神である故人様や祖先を讃える、重要な言葉です。独特な節回し、かつ何を話しているのか分かりづらいかもしれませんが、祝詞に込められた想いを理解することで、その趣も変わることでしょう。

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