菩提寺とは?檀家になるメリットやわからないときの対策などを紹介
2022.05.25
「菩提寺(ぼだいじ)」という言葉を聞いたことがありますか?もしかしたら「どこかにそういう名前のお寺があるのか?」と思われたかもしれません。
菩提寺とは特定のお寺の名前ではなく、先祖代々のお墓があるお寺のことをさす言葉です。菩提寺という言葉をご存知の方も、葬儀や法要を迎えることで、はじめて意識するようになると思います。
現在の日本では、仏式で行う葬儀が全体の8割を超えています。今回は仏教と葬儀が密接な関わりを持つに至った背景に触れながら、菩提寺について解説できればと思います。
菩提寺とは
菩提寺がどのようなものか理解してもらうために、檀家の概要と、檀家になるメリット・デメリットについて解説します。また、檀那寺、旦那寺との違いについても確認しておきましょう。
菩提寺と檀家
前述の通り、菩提寺とは「先祖代々のお墓があるお寺」をさします。そのため、葬儀や法事を、この菩提寺にお願いすることが一般的です。
菩提寺と一緒によく耳にするのが「檀家(だんか)」という言葉です。檀家とは、信徒としてお寺に所属し、お寺の支援をする家のことをさします。
この菩提寺と檀家の関係が「檀家制度」や「寺檀(じだん)制度」、「寺請(てらうけ)制度」と呼ばれるものです。まずは、この制度における双方のメリットを解説します。
菩提寺の檀家になるメリット
菩提寺の檀家になると、手厚い供養を受けられる点がメリットです。葬儀を執り行う場合には、菩提寺の僧侶が読経を行ってくれます。また、その後の四十忌日法要や一周忌なども、継続して任せることが可能です。なお、菩提寺がない場合には、葬儀の際に読経をお願いするお寺を探して依頼する必要があります。
葬儀や法要の相談をはじめ、仏壇や位牌など、あらゆる仏事の相談が気軽にできることも菩提寺の檀家になるメリットです。多くの方が仏事に関する深い知識を持っていないと思われるため、檀家になっていると非常に心強いと思います。また、菩提寺の主催する行事に参加することも可能です。
そして、菩提寺にお墓を建てることで、その後のお墓の心配がいらなくなります。お墓を継承した家族は、基本的にそのお墓に入ることになるので、金銭的な負担も下げられるでしょう。
なお、菩提寺側はこれらの対価として、年会費やお布施で経済的な支援を受けられます。
菩提寺の檀家になるデメリット
菩提寺の檀家になる場合には、お布施やお墓の年間使用料を支払う必要があります。
葬儀や法要を執り行う場合には、その都度僧侶にお布施を支払わなくてはいけません。お布施の金額は特に決まっていませんが、葬儀の場合は数十万円、法要の場合は数万円程度が相場と言われています。また、お寺の修繕が必要になったときなどには、お布施のお願いをされる可能性もあるでしょう。
また、菩提寺にお墓を作った場合には、年間使用料を支払う必要があります。こちらは数千円から1万5千円程度が相場です。さらに、お墓の維持・管理は継承者が行う必要があるので、定期的に掃除や修繕が必要なことも覚えておきましょう。
菩提寺と檀那寺、旦那寺などとの違い
菩提寺という呼び名のほかにも、似た意味の言葉がいくつかあります。この機会に、それぞれを区別できるように覚えておきましょう。
檀那寺(だんなでら)、旦那寺
檀那寺や旦那時とは、檀家となり支えているお寺のことです。必ずしも、先祖代々のお墓をそこに置いている訳ではありません。菩提寺のある場合は、そのお寺の檀家になっている(檀那寺である)ことがほとんどなので、檀那寺のほうがより広い意味の言葉ということになります。
お手次寺(おてつぎでら)
浄土真宗では、菩提寺ではなくお手次寺、檀家ではなく門徒と呼ばれています。浄土真宗は、先祖の追善供養をしない宗派のため菩提寺とは呼ばず、本山のお取り次ぎをするという意味でお手次寺となるそうです。
檀家制度の歴史
そもそも、檀家制度が確立されるまでには、どのような背景があったのでしょうか?本章では、檀家制度の歴史を掘り下げてみたいと思います。
檀家制度の起源は江戸時代
江戸時代以前の日本では、檀那寺と檀家という関係が、自然発生していました。これは農民が仏事を寺院に委託する代わりに、寺院の維持費を負担する関係のことです。
応仁の乱をさかいに、貴族や武士だけでなく、農民も寺院の支え手に成長していきました。この時点で菩提寺ではなく、檀那寺という言葉を使うのは、一家全体が一つのお寺に所属するまでには至らず、あくまでも檀家とお寺の支え合いにとどまったためです。
そして17世紀後半になり、徳川幕府によって「寺請(てらうけ)制度」が推進されます。これは、すべての人々がいずれかの寺院の檀家になることを強制する制度です。
一家の菩提寺として一つのお寺を支え、そのお寺に仏事を依頼することとなります。ここにきて、一家一寺の考えが浸透し、祖先崇拝が強まったといえるでしょう。
一方、幕府は寺請制度を推進しました。その結果として発生した、寺院と檀家の関係を寺檀関係と呼び分ける場合もあるようです。一般的に檀家制度と寺檀制度、寺請制度は、区別なく使われています。
寺請制度の推進目的
「寺請制度」は、どういった目的で推し進められたのでしょうか。
まず、幕府はすべての人々に寺檀関係を強制することで、戸籍の管理を行おうとしました。お寺は、檀家からのお布施を受け取ると同時に、戸籍の管理を請け負う義務が発生する訳です。
戸籍を管理していた書類を「宗門人別改帳(しゅうもんにんべつあらためちょう)」と呼びます。宗門人別改帳は、家族構成の記録に加え、キリシタンでないことを寺院が証明するための記録でもありました。
戸籍整備によって人口調査などを容易にし、同時にキリシタンの取り締まりを可能にしたため、幕府にとっては一石二鳥な制度だったといえるでしょう。寺院側としては、住民の管理に携わることで、実質仏教が国教と認められたため、非常に利益の大きいものでした。
一方、住民側としては、檀家にならなければ戸籍が手に入らないので、寺請制度には従うほかありません。
こうして、葬儀は寺院にお願いするものとなりました。現在の葬儀をお寺に依頼するという常識は、江戸時代には義務だったということです。ちなみに、この寺請制度は1871年に明治政府によって廃止されるまで、約200年間続きました。
日本における葬儀と仏教の関係や、檀家制度に関しては、長い歴史があるということですね。
菩提寺との付き合い方
菩提寺がある場合は、仏事に関して菩提寺への相談が不可欠です。また、年会費や墓地の管理費、お布施はきちんと納めなくてはいけません。
もちろん、これは葬儀も例外ではありません。身内が亡くなった場合や終末期には、まず菩提寺へ相談することになります。
具体的には、葬儀の日程・戒名・納骨・法要に関して、話をすることが必要です。遠方であるといった理由から、菩提寺の住職が葬儀に来られない場合には、菩提寺の紹介という形で、同じ宗派の近隣の僧侶を派遣してもらうことになります。
自己判断で菩提寺に連絡を入れずに葬儀を進めると、納骨の段階でトラブルになる可能性があるでしょう。菩提寺は、先祖代々のお墓を守る大切なお寺ですので、礼儀を欠かさないよう注意が必要です。
菩提寺がない、わからないときの対策
ここまで、菩提寺に関して解説してきましたが、そもそも菩提寺がないという方もいらっしゃると思います。また、菩提寺はあると聞いているものの、どこのお寺なのかわからないという場合もあるでしょう。本章では菩提寺がない、わからないときの対策を紹介します。
菩提寺がない場合
菩提寺が無い方の中にも、いくつかの理由が考えられます。
・仏教以外の宗教を信仰している
・家族の意志で離檀(檀家をやめること)した
・お墓が公営・民営墓地や霊園にある
仏教以外の宗教を信仰しているケースは、神道やキリスト教をはじめ、さまざまな宗教が当てはまります。この場合は、葬儀に関しての相談先に困ることはないでしょう。菩提寺との付き合い方と同様、身内が亡くなった際には必ず連絡し、司式者の手配をお願いすることになります。
家族の意志で離檀することは、自ら菩提寺を持たないことを選択した場合です。墓じまいをするか、お墓を移す(改葬する)必要があるでしょう。なお、離檀に関しては後程解説します。
お墓が公営・民営墓地や霊園にある場合に関しては、さまざまなパターンが考えられます。例えば「分家となったため、新しく墓地を購入した」「地元を離れたため、お参りのしやすい近所にお墓を持った」「菩提寺ではないものの、特定のお寺との付き合いがある」といったケースが想定されるでしょう。
また、普段はお寺との付き合いが無いものの、葬儀は仏式で行いたいという方もいるかもしれません。そのようなときには、葬儀社から近隣の寺院の僧侶を紹介してもらうことが可能です。葬儀・法要でのみお世話になることはもちろん、希望があれば葬儀を機にそのお寺の檀家にもなれます。
「檀家離れ」という言葉もあるように、宗教観の変化により檀家であることのメリットを感じない世代が増えてきました。それにともない、菩提寺を持たない人口が増えてきたことも確かです。菩提寺が無いこと自体は、まったく珍しいことではありません。しかし、先祖の供養や葬儀の方法に関して、家族間での話し合いが重要になるでしょう。
菩提寺がわからない場合
菩提寺があることは知っているが、菩提寺がどのお寺なのかわからないというケースも散見されます。
その場合は、ご遺族の家族や兄弟に尋ねることが先決です。解決しなかった場合には、ご親戚や遠方の本家などに確かめてみましょう。
また、ご自宅に仏壇がある場合には、ご本尊から宗派を特定できます。そこに書かれた戒名から判明した宗派のお寺へ問い合わせることで、菩提寺を特定できるかもしれません。
檀家をやめたり菩提寺を変えたりできるのか?
一度菩提寺の檀家になった場合、やめることや、ほかの菩提寺の檀家になることが可能なのか気になることでしょう。双方について解説します。
離檀について
お寺にあるお墓を撤去・移転して、檀家を離れることを「離檀(りだん)」と呼びます。
離檀を選択する理由には、菩提寺が遠方でお墓参りができない場合や、後継者がおらず撤去せざるを得ない場合などが挙げられます。なお、離檀に必要な手続きは、以下の通りです。
・菩提寺から「埋蔵証明書」を発行してもらう
↓
・現在お墓のある市区町村の役所で、改装許可申請書を提出し、「改葬許可証」を受け取る(※市区町村によっては、次のお墓の受入証明書が必要な場合もある)
↓
・お墓の魂抜き(閉眼供養)を行い、遺骨を取り出す
↓
・お墓の撤去や移転を行う(※日程は、石材店と要相談)
離檀を検討している場合には、菩提寺の住職や親族と、事前に相談するようにしましょう。前もって意思疎通を図っておくことが、トラブルの防止につながります。何よりもこれまでお墓を守って頂いた感謝を、忘れないようにしたいところです。
離檀を行う場合の注意点
離断を行う場合には、事前にお墓を移す先を決めておかなくてはいけません。立地や経済面など、離断の理由はさまざまですが、希望条件に合った菩提寺を探しておくことが必要です。
また、お墓を移動させるのか、墓じまいするかによっても、取り得る方法は大きく異なります。お墓を維持する場合には、墓石をどうするかについても決めておく必要があるでしょう。
さらに、離断する際には、菩提寺から埋蔵証明を取得し、移動先のお寺では受け入れ証明を発行してもらう必要があります。そのため、菩提寺との関係性が悪くならないように調整しなくてはいけません。
そして、離断が決まった際には、墓所の原状復帰が必要です。墓石を扱う石材店に依頼して、工事を依頼します。工事費用の相場は1㎡あたり10万円程度です。
このように離断をする際には、さまざまな検討、調整事項があるため、ご自身のスタンスはもちろん、ご家族やご親戚ともよく話あってから判断しましょう。
まとめ
菩提寺とは、先祖代々のお墓がある、仏事を依頼するお寺のことです。檀家と菩提寺の関係は、江戸時代の寺請制度に由来します。葬儀の際、檀家は菩提寺に必ず相談しなくてはいけません。
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