故人様のご遺骨を納める大切な儀式。納骨式(納骨法要)の流れや費用相場などを解説
2022.05.26
故人様のご遺骨をお墓へ納める大切な儀式が納骨式です。納骨式を執り行う際には、事前にお墓を建てる必要があります。また、その際には開眼法要も行なわなくてはいけません。
さらに、納骨のために必要な手続きも多くあります。納骨にかかる費用も気になるところでしょう。そこで今回は、納骨式の流れや費用相場などを解説するので、参考にしてみてください。
納骨の概要と時期
納骨がどのようなものか理解してもらうために、概要と実施時期を解説します。この機会にしっかりと内容を理解しておきましょう。
そもそも納骨とは
納骨とは骨壷に納めた故人様のご遺骨をお墓などに埋葬することです。
お墓に納骨する際には、墓石の下にあるカロートの中にご遺骨を納めます。また、納骨する場所はお墓以外にも納骨堂や自宅で手元供養をするケースもあるなど、好きな方法が選べることが特徴です。
また近年は、納骨とよく似た言葉として「埋葬」が使われます。故人様のご遺骨をお墓や納骨堂などへ納めるという点においては、どちらも同じような意味だといえるでしょう。しかし、若干ニュアンスが異なるので、興味のある方は以下の記事でご確認ください。
納骨の時期
納骨の時期は特に決まっていませんが、すでにお墓がある場合は、四十九日法要の際に納骨するケースが多いです。ただし、地方によっては葬儀当日、火葬後に初七日の法要と四十九日の法要をあわせて行い、納骨も済ませてしまうところもあります。
お墓がない場合は、一周忌を目安に建墓して納骨することが一般的です。墓石が準備できていなくてもカロートが完成している場合は、墓石のかわりに白木の墓標を立てておき、納骨を行うこともあります。
お墓が完成するまでは、ご遺骨を自宅に安置しておいてもかまいません。床の間などに台と祭壇を作って安置をするか、すぐにお墓を建てられない場合は、寺院や墓地の一時預かりの納骨堂に遺骨を預けられます。
納骨式(納骨法要)を行う流れ
納骨を行う際には、納骨式と呼ばれる儀式を執り行います。本章では、納骨式のおおまかな流れについて解説するので、確認しておきましょう。なお、今回はお墓へ納骨するケースです。
納骨用のお墓を建てる
故人様のご遺骨をお墓へ納骨する場合には、お墓を建てる必要があります。
葬儀会社や石材会社へ赴き、どのようなお墓を建てるか検討しましょう。大きさや石材、彫刻のデザインなどによって、値段や工期が大きく異なるので慎重な検討が必要です。
また、どこにお墓を建てるかについても、平行して決めなくてはいけません。お墓を建てる場所はお寺や霊園に永代使用料を支払い、墓地を借りるケースや、公営・民営の霊園に建てるケースなど千差万別です。法要の実施や日々の維持・管理も考慮し、ご家族やご親戚がアクセスしやすい場所を選ぶことが重要でしょう。
霊園の手配やお墓のデザインなどで、最低でも2~3か月程度は必要で、場合によっては半年以上かかることも珍しくはありません。
開眼法要を執り行う
新しいお墓を建てた際には、墓石に魂を入れる「開眼法要」を行います。開眼法要とは仏像や位牌、仏壇、お墓などに魂を入れて安置する「入魂式」「御魂入れ」とも呼ばれる儀式です。
開眼法要を行う時期に決まりはありませんが、お墓は新しい仏様のために建てることが多いため、四十九日、百か日、一周忌などの法要のタイミングで、納骨式と一緒に行うことが一般的です。親類縁者など参列者も出席しやすいことも理由のひとつでしょう。
一方、生前にお墓を建てた場合は、完成時に営むこともありますが、最初の納骨の際にあわせて行ってもよいと思います。
お墓の場合はさらに「お墓開き」とも呼ばれ、単なる石であった墓石が、この法要を行うことによってはじめて礼拝の対象となります。お墓を改葬し、新しいお墓を建てたときにも開眼法要を行わなくてはいけません。また、墓じまいをしたときには「御魂抜き(閉眼法要)」を執り行うことで、墓石から魂を抜きます。
開眼法要の費用
開眼法要の費用として、一番大切なのは読経への謝礼です。
「お布施」として白封筒などに入れて僧侶に渡します。お布施の額に決まりはないことも多いですが、一般的に3万円から5万円程度が相場といえるでしょう。
また、寺院境内墓地以外で僧侶にお墓まで出向いてもらう場合は、お布施とは別に1万円程度の御車代を包みます。開眼法要の後、僧侶が会食に出席しない場合は、それに見合う金額の「御膳料」を別にお包みするとよいでしょう。こちらも1万円程度が一般的です。
法要の際に石材店や墓地の管理者にお世話になった場合は、こちらにもお礼を包むこともあります。白封筒に「志」として金額は1万円から3万円程度が多いです。
納骨の手続き
火葬した故人様のご遺骨をお墓に納骨する際には、埋葬許可証が必要です。
人が亡くなったときには、市区町村役場に死亡届の提出と火葬許可証の申請を行い、火葬許可証の交付を受けます。火葬許可証は、火葬の際に火葬場に提出しなくてはいけません。なお火葬許可証は、火葬終了後に記入押印されてご遺骨と一緒に返却され、埋葬許可証になります。
新しい仏様のためにお墓を建てる場合、火葬してから納骨するまでに1年以上かかることも一般的です。埋葬許可証は紛失しないように、きちんと管理しましょう。多くの場合、火葬場で係員の方が骨壺におさめた白木の箱に、埋葬許可証を一緒に入れてくれます。
納骨式当日は、埋葬許可証のほかに「墓地の使用許可証」も忘れずに持参しなくてはいけません。納骨する墓地では、管理者に埋葬許可証を提出し、墓地の使用許可証を提示します。
納骨式(納骨法要)の実施
ご遺骨を納骨する際には、納骨式を執り行います。新しい仏様のためにお墓を建てた場合は、お墓の開眼法要と納骨式を一緒に行うことが一般的です。すでにお墓がある場合は、追善法要と納骨式を行います。
納骨式はあまりおおげさにせず、故人様の近親者、ご親戚とごく親しいご友人で行う場合が多いです。日時が決まったら、案内状を送る必要があるので、お寺様などと相談のうえ決めましょう。
納骨の際には、拝石やカロートのふたを動かすため、事前に墓地の管理事務所と石材店に連絡して準備してもらいます。石材店には、墓石か墓誌へ戒名の彫刻も依頼しなくてはいけません。
当日は遺骨や遺影、位牌とともに「埋葬許可証」「墓地の使用許可証」を持参します。遺骨は故人様の配偶者か、配偶者がいない場合は故人様ともっとも血縁の深い方が運ぶことが普通です。また、ご遺族は喪服を着て参加しましょう。
一周忌法要の日に開眼法要と納骨式を行う場合には、寺院の本堂などで一周忌法要を行い、その後墓地に出向いて開眼法要、納骨式を行います。納骨式では、施主または遺族代表が骨壺をカロートに納めます。故人様の墓前にお線香をあげ、読経して供養した後、会食を行うことも多いです。
分骨するための手続き
分骨とは、遺骨を分けて2か所以上の場所に納めることです。
葬儀前から分骨をすることが決まっている場合は、前もって葬儀会社に伝えておき、分骨用の骨壺を用意してもらいましょう。火葬場では、分骨するお骨を収骨の際、係員が分けてくれます。また、埋葬許可証とともに、分骨証明書も発行してもらえます。
遺骨を埋葬するためには、埋葬許可証が必要です。しかし、埋葬許可証は1通しか交付されないので、分骨先に納骨する際には分骨証明書を埋葬許可証の代わりとします。
遠方の菩提寺からお参りしやすい近くのお墓に分骨したり、兄弟姉妹が親の遺骨の分骨を希望したりするなど、すでに埋葬されている遺骨を分骨しているケースも想定されるでしょう。この場合は、まず遺骨が埋葬されている墓地の使用権所有者に、分骨してほしい旨を伝え了解を得ます。
遺骨の所有権は祭祀継承者(墓地の使用権所有者)にあるので、こちらの了解が得られなければ分骨はできません。了解が得られたら、遺骨が埋葬されている墓地の管理者に分骨証明書を発行してもらいます。
この分骨証明書は、分骨先の墓地に納骨するときに、墓地の管理者に提出が必要です。法律的には墓地の管理者は、分骨の希望があった場合、拒否できません。しかし、お墓が荒れるといった理由で、分骨を嫌う墓地もあるようです。そのような場合は、十分に話し合って理解を得る必要があるでしょう。
納骨式(納骨法要)にかかる費用
納骨式を行う際には、さまざまな費用が発生します。それぞれの費用相場と、僧侶へのお布施の相場を紹介するので、参考にしてみてください。
納骨式(納骨法要)の費用相場
納骨式を執り行うためには、以下の費用を想定しておく必要があります。
・カロートの開閉:1万5,000~5万円程度
・戒名・名前の彫刻:3万~8万円程度
・法要する場所の費用:1万~5万円程度
・卒塔婆:2,000~1万円程度/枚
また納骨式の後、会食を行う場合は3,000~1万円程度の食事代、引き出物を渡す場合には、2,000~5,000円程度の費用が人数分必要です。さらに、僧侶へのお布施も準備する必要があります。
僧侶へのお布施の相場
四十九日法要とあわせて納骨法要を執り行う場合、僧侶へのお布施は全体で5~10万円程度が相場といえるでしょう。
四十九日法要のお布施は、葬儀の際に渡したお布施の相場である30~50万円の10~20%程度が相場といわれているからです。ただし前述の通り、お布施には特に決まった金額が定められておらず、地域やお寺などによっても変わります。そのため、ご親戚やご近所の方に、相場を聞いておくと安心でしょう。
法要の営みかた
年忌法要では、寺院などで僧侶に読経をしてもらい、その後にお墓参りをします。宗派によっては、卒塔婆供養を行うこともあるでしょう。法要の後には、僧侶と参列者を招いて会食の席を設け、僧侶と参列者をもてなします。
四十九日の忌明け法要や、一周忌、三回忌などは、親族や友人・知人を招くこともあるため、しっかりとした準備が必要です。
法要が重なった場合は、同時に行なってもよいでしょう。例えば、父親の七回忌と祖母の十三回忌など、同じ年に2人以上の法要がある場合には、法要をあわせて行っても構いません。これを「併修(へいしゅう)」または「合斎(がっさい)」と呼びます。
場合によっては、同じ年ではなく1年程度の違いの場合も、後の法要を前の年に早めて行うこともこともあるでしょう。併修を行う際には、祥月命日の早いほうに合わせます。
案内状を出すときは、誰と誰の法要なのかが分かるように明記しましょう。ただし、一周忌と三回忌は併修せずに、単独で法要を営みます。
卒塔婆供養について
浄土真宗以外の宗派では、法要でお墓参りをする際、施主や参列者が卒塔婆(そとば)を立てるしきたりがあります。これが卒塔婆供養と呼ばれるものです。
略して「塔婆(とば)」とも呼ばれる卒塔婆は、梵語の(ストゥーパ)がなまったもので、塔を意味します。インドでは、お釈迦様の遺骨が8つの国に分骨され、それぞれ塔を造って供養されたと伝えられているようです。
供養の対象だった塔が、後に変化して五輪塔になり、簡略化されて卒塔婆になりました。卒塔婆にある刻みは、五輪を表しています。
角柱を用いた角塔婆、板を用いた板塔婆などがあり、法要で供養されるのは板塔婆です。仏教では、卒塔婆を立てることがもっともよい供養になるといわれています。
卒塔婆には経文や戒名、梵字、回忌、没年月日、施主名、供養年月日などが書かれることが一般的です。事前に申し込む方の名前や本数をまとめ、お寺に依頼して用意してもらいましょう。卒塔婆は年忌法要のときだけではなく、お盆やお彼岸、祥月命日など、お墓参りをするときであれば、いつ立てても構いません。
まとめ
納骨式を執り行うためには、お墓を建てることはもちろん、さまざまな手続きが必要です。また、多くの費用が必要なので、事前に準備しておかなくてはいけません。
納骨式の日程は、ご家族やご親戚、お寺様と相談して、都合の良い日程を組むとよいでしょう。本来、納骨式を含む法要は先延ばしにしないことが普通ですが、新型コロナウイルス感染症の流行などの理由から、やむを得ず延期を考えるケースがあります。この場合も、まずはお寺様やご親族に相談して、承諾を得ておくべきでしょう。
また、昨今はお墓が遠い、体調が悪いといった理由もあり、なかなかお墓参りへ行けないこともあります。そのようなときは、お墓の近くの親戚や知人に頼み、代わりにお参りしてもらうのもよいかもしれません。
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