香典とお布施の違いとは?歴史やマナーについて解説

2023.10.07

香典とお布施は日本の宗教的な儀式や慣習において、故人様や神々への尊敬と感謝を示す手段の1つとされています。文化や宗教に根ざしており、日本の社会生活において欠かせないものだといえるでしょう。

しかし、香典とお布施はしばしば同じものだと思われるケースも多く、両者の違いを把握していない方が多いことも事実です。また、香典やお布施は適切なマナーを守って渡す必要があります。

そこで今回は、香典とお布施の違いや、金額、お札の入れ方などのマナーについて解説します。

香典とお布施の違い

香典とお布施とは、どちらも日本の葬儀や法事において使われるものですが、混同されやすい点もあるため、詳しく解説します。

香典は、故人様の霊前に供えて、お香や花の代わりとする金品のことです。漢字にはお香やお線香の代わりにお供えするという意味があります。また、故人様のご遺族を経済的に助けるという意味合いも含む点が特徴です。

一方、お布施は仏教用語で、僧侶に法事の謝礼として渡す金品のことです。他人へ恵む金品もさすこともあります。

香典とお布施は、渡し方にも違いがあります。香典はお通夜や葬儀に参列した際、受付で渡すことが一般的です。自宅葬などで受付がない場合には、ご遺族に直接渡すか、仏前にお供えします。

お布施は、相手に直接手渡すことがマナー違反とされています。手渡す際には、切手盆やふくさを使うことが一般的です。手渡す際には「些少ですがお納めください」という口上を述べることが丁寧でしょう。

ここからは、両者をより理解するために、それぞれの内容やマナーについて詳しく解説します。

香典の歴史とマナー

香典は、かつて「香奠」と書かれており「香を供える」という意味です。こちらから転じて、香を買う代金である「香典」「香資」「香料」になりました。一説では元来、墓に香花(樒)を捧げたことに由来するのではないかと推察されています。

近年、香典は金銭香典が一般的ですが、昔は米などの食料での食料香典が多く、金銭香典へ移り変わったのは大正、あるいは昭和初期からだそうです。

ここでは、香典の歴史とマナーなどについて掘り下げてみましょう。

食料香典から金銭香典への変遷

食料香典の由来は、仏教的には香が「仏の食べ物」という意味から転じて「食料」になったものとも考えられていますが、現実的には葬儀で食事の振る舞いが盛んに行われたことに起因するものとも考えられます。昔は葬儀に参列される方が、喪家の振る舞いに預かり、自分の家では食事をしなかったと言われており、その分の食料を皆で持ち寄ったものが食料香典の由来になったという説もあるそうです。

喪家では死者の成仏を願い人々に食事を振舞いました。これが現在でも「食べ供養」と言われているゆえんだと思われます。

その後、貨幣経済が発達すして現在の金銭香典に移り変わりましたが、本来の香典の意味合いは変わっておらず、助け合い(相互扶助)の精神によるものに変わりはありません。香典は地域社会における義理の1つともいえるため、自分の家で葬儀を出したときに頂いた香典の金額を香典帳で管理し、同程度の金額で香典返しを渡すのが好ましいでしょう。

香典の金額相場

香典の金額相場は、以下のとおりです。

・近隣の人:3,000~5,000円程度
・一般参列者:5,000~10,000円程度
・ご親族:10,000~50,000円程度
・ご家族:50,000~100,000円程度

かつて仏事では、偶数を使わない習慣があったそうです。しかし、1万円の次が3万円の場合、上がり幅が大きいため、2万円という金額の香典も出現しています。

ただし、あくまでも相場であり、地域や宗派などによって異なる可能性があるため、香典の相場を事前に確認しておくと安心です。

なお、香典の金額に応じて、香典袋も適切なものを選択しなくてはいけません。以下の記事を参照していただき、マナーを守った対応をしていただければ何よりです。

関連記事:『香典袋は包む金額で選ぼう!種類や書き方も紹介』

香典袋の上書き

仏教葬儀の場合、香典の上書きは四十九日までが「御霊前」、四十九日後は「御仏前」と書くのがマナーです。なお、どの宗教の場合でも、葬儀の香典は「御霊前」と書いてよいという俗説もありますが、これは間違いのため注意しましょう。

例えば浄土真宗では、亡くなった方が即浄土に往生すると考えられているため、「霊」の存在は認められていません。そのため香典袋の上書きには、御霊前ではなく御仏前を使用します。

その他の宗派や宗教における、香典袋の上書きの書き方は、以下のとおりです。

・曹洞宗など禅宗:「御仏前」が一般的。教義に「浄土」はないため「成仏以前」という考え方もない
・キリスト教:「御花料」が一般的。ただし、カトリックでは「御霊前」を日本人の慣習として許容している
・神道:「御玉串料」「御榊料」「御神前」が一般的

また、香典の上書きは薄墨で書くのがマナーといわれていますが、薄墨を用いることに明確な理由はありません。ただし、一般的には「急な訃報で墨をしっかり磨ることができなかった」「涙で薄まってしまった」など、悲しみを表すためだといわれています。つまり、故人様やご遺族に対する気遣いから生まれた習慣だといえるでしょう。

香典袋へのお札の入れ方・マナー

香典袋にお札を入れる場合には、さまざまなマナーを遵守しなくてはいけません。いくつかのポイントを押さえる必要があるため、それぞれの内容を確認しておきましょう。

お札の向きを揃える

複数枚のお札を香典に入れる場合は、お札の向きを揃えましょう。これは、ご遺族が香典を確認する際、お札が数えやすくなるようにという配慮のためです。お札にシワが寄ったり、折れ曲がったりしないよう注意を払いながら、香典袋に入れます。

肖像画を裏向きにする

お通夜や葬儀で渡す香典は、お札の肖像画を裏向き・下側にして入れるのがマナーです。香典袋を開けたときに、お札の肖像画が見えないように入れることで、故人様を失った悲しみを表現できるといわれています。

ただし一周忌や三回忌法要では、肖像画を表にして入れるのがマナーのため注意しなくてはいけません。このような法要の香典は「故人様を失った悲しみや慎み」ではなく「故人様へのお供え物」といった意味合いが強くなるためです。参列する法要の種類によって、お札の入れ方や向きを調整しましょう。

新札は使わない

弔事であるお通夜や葬儀の香典には、新札ではなく折り目のついたお札を入れるのがマナーといわれています。新札は、前もって準備しないと手に入りにくいため、香典に新札を入れると「死ぬことを予期していた」という意味になるためです。

そのため「急な訃報を受けて慌てて準備した」という意味になるよう、折り目のついたお札を入れるようにしましょう。ただし、あまりにも汚れているお札や、折り目の多いお札を包むことも、ご遺族や故人様に対して失礼にあたります。軽く折り目がついたきれいなお札を選ぶと安心です。

中袋がある不祝儀袋を使う場合

中袋にお札を入れます。肖像画は裏面・下側になるようお札を入れましょう。お札を入れた中袋には、香典を郵送する場合を除いてのり付けはしません。中袋は外袋で包むため、お金が外に出てしまうことがないためです。

また、のりで封がされていると中袋を開けるのに手間がかかり、ご遺族の負担になります。市販されている香典袋の中には、「緘」「〆」と書かれたシールが入っているものもありますが、こちらも貼らないことがおすすめです。

ただし、郵送で香典を送る場合は、のり付けをする必要があります。このとき、ご遺族への配慮やお悔やみの気持ちを書いた手紙も中袋に同封しましょう。袋をのり付けしていないと手紙が落ちてしまう可能性もあるため、きちんと封を確認することが大切です。

金額の書き方

お札を入れた中袋の表面には、包んだ金額を記入します。金額を記入する際は、改ざん防止のため旧漢字で書くのがマナーです。金額の頭には「金」を、後ろには「圓」をつけて書きましょう。例えば、3千円を包んだ場合は「金参阡圓」と書きます。もし、中袋に横書きの記入欄が印刷されていた場合は、算用数字を使用しても問題ありません。横書きで書く場合は「5,000円」「30,000円」と記入しましょう。

中袋の裏面には、住所と氏名を記入します。中袋の裏面の左側に住所を、住所の左隣に自分の氏名を記入しましょう。お通夜や葬儀の香典は、薄墨の筆ペンか毛筆で書くことがマナーとされています。しかし、筆に慣れていないと字が潰れてしまうことはあるため、ボールペンや万年筆を使用しても構いません。

氏名の書き方

香典を出した人数によって異なります。1人で香典を出す場合、自分のフルネームを記入すればよいです。夫婦で香典を出す場合は、右側に夫のフルネームを書き、その左隣に苗字を省いた妻の名前を記入しましょう。

3人までの連名で香典を包む場合、全員の名前を記入するのがマナーです。立場の上下がある場合は、右に立場の高い人の名前を書きます。立場が同じ人と香典を出す場合、右から五十音順に氏名を書きましょう。4人以上の連名になる場合は、代表者の名前のみを中袋に書き、左側に「外一同」と記載します。

なお、香典のマナーについての詳細は、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

関連記事:『香典はマナーが大切!金額の目安やマナー、書き方などをご紹介』

お布施の歴史とマナー

お布施は、お寺やご本尊へ贈与するもので、もともとは自分のものを無条件で与えるという悟りを開くための修行の1つでした。現代では、葬儀で読経をお願いした僧侶に渡すお礼としての役割がメインとなりました。しかし、もともとは仏教徒が悟りを開くために行う修行である「六波羅蜜(ろくはらみつ)」の1つだったといわれています。自分の持ち物を、無条件で他人に施すことが修行の内容だったそうです。

したがって「御経料」「戒名料」という表現は、対価としての意味合いが強いため、お布施にはふさわしくないとされています。もちろん、ご遺族には「お礼」の気持ちもあると思われますが、それを超えた意味があることを理解しなくてはいけません。

お布施の語源

お布施は「布を施す」と表記しますが、これは大昔のインド仏教が由来といわれています。お釈迦様(ブッダ)が仏教を始めたとき、僧侶は信徒に布を施されたものを着ていました。
現在の南アジアの修行者が着ている衣装に近しいもので、それが袈裟の始まりといわれており、この布を僧侶に渡す行為を「布施」と呼ばれています。

お布施袋へのお金の入れ方

お布施袋にお金を入れる際には、以下のポイントに留意しましょう。

・できれば新札、もしくはできるだけ綺麗なお札を包む
・肖像画が表、かつ「壱万円」と書かれた側を下にして入れる
・お布施を包む奉書紙は、表面がザラザラしている裏面の上にお札を入れる
・お布施袋の表に「〇〇家」と記入する
・薄墨ではなくペンで記入する

香典には一般的に薄墨を用いますが、お布施は事前に準備するものであるため、濃いペンで書いたほうがよいといわれています。

なお、お布施のマナーに関する詳細については、以下記事の内容もご参照ください。

関連記事:『お布施とは?さまざまなマナーや黄白のお布施袋、封筒の選び方などについて解説』

お布施の金額相場

お布施の金額は、一般的には以下のような相場があります。

・葬儀やお通夜の場合:15万円から50万円程度
・初七日法要:3万円から5万円程度
・四十九日法要:3万円から5万円程度
・納骨式:1万円から5万円程度
・初盆・新盆:3万円から5万円程度
・年忌法要:3万円から5万円程度

ただし、これらは一般的な相場であり、地域や宗派によっても異なることがあります。また、個々の事情や関係性によっても金額は変わることがあるため注意は必要です。

さらに、近年は葬儀も家族葬が主流になり、規模は縮小傾向です。昔ほど仏事にお金をかけられないという声もよく聞きます。したがって、具体的な金額を決める際には、お寺や葬儀会社に相談することをおすすめします。

まとめ

香典やお布施といった仏事作法には、一定の決まりやマナーが存在するため覚えておいて損はないでしょう。本記事の内容を参考に、適切な対応を行っていただければ何よりです。

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