お寺にお墓を持つメリット・デメリットとは?菩提寺と檀家、宗派ごとのお墓の特徴も紹介

2022.08.16

最近は、メディアでお寺にお墓を持つことのマイナス面が紹介されることがよくあります。金銭面で色々出費が重なる檀家をやめて、霊園や樹木葬、納骨堂、散骨など、それぞれのライフスタイルに合わせたお墓を選べる時代になったことが大きな理由といえるでしょう。

一方で、未だ寺院墓地に根強い人気があることも事実です。普段生活していると、なかなか仏事に触れることはありません。しかし、菩提寺とのお付き合いがあれば、色々と相談ができ心強いものです。

今回は、先祖供養が変化した状況を踏まえ、お寺にお墓を持つことのメリット・デメリットや菩提寺と檀家、宗派ごとのお墓の特徴を解説します。

菩提寺と檀家

菩提寺とは、先祖のお墓があり法事を行ってもらうお寺のことです。また、菩提寺に属する家庭を檀家と呼びます。

檀家は、サンスクリット語の「ダーナパティ」が語源になっており、お寺や僧侶を援助する庇護者という意味です。つまり、お寺を経済的に援助する見返りとして、法事や葬式を行なってもらえる関係が、菩提寺と檀家の座組といえるでしょう。

寺院墓地を購入するときに注意点

菩提寺に入檀する場合には、以下の点に注意しましょう。

・コストが発生する
・菩提寺のルールに従う必要がある
・宗派によっては墓地を購入できない場合がある

菩提寺の檀家になるためには入檀料が必要です。また、毎年お布施を支払わなくてはいけません。さらに法事や月命日など、僧侶にお経を唱えてもらう度にお布施を包む必要があります。

檀家は菩提寺側のルールに従うことが基本です。よって、菩提寺によって付けられた戒名を変更できないことはもちろん、法事や葬儀はすべて菩提寺の僧侶に依頼しなくてはいけません。

また、寺院墓地を購入する際には、お寺によっては特定の宗教や宗派でなければ、購入できない場合があります。どうしても、そのお寺の寺院墓地を購入したい場合は、改宗しなくてはいけない可能性もあるでしょう。

例えば、自宅から近い菩提寺を見つけて、お寺の墓地に故人様を納骨したい場合は、お寺と入檀の相談を行い檀家となった時点で、お墓を建立し納骨することが可能です。檀家になると、そのお寺で定められている年間行事(お盆、お彼岸供養など)に参加したり、古くなった境内建物の修繕を行ったりと、お墓参り以外にもやるべきことがたくさんあります。

そのため事前相談の際には、檀家になった後、どのようなイベントが発生するのか確認しておきましょう。「家からお寺までの距離が近いから」といった理由で檀家になってしまい、後で「イメージと違う……」という状況に陥ることは避けたいところです。

離檀が増えた原因

最近は「後継がいない」「遠方でお参りができない」といった理由で、檀家離れするケースが増えています。

菩提寺が遠方にある場合、お参りに行くこと自体が困難です。また年齢を重ねると、お墓へ行くまでに坂や階段が多いと、お墓へ行くことを躊躇してしまいます。坂や階段があまりないフラットな霊園などを選ぶ方が増えているのは、これが原因の1つです。

葬儀のプランも何通りか種類はありますが、自分達の行いたいプランで実施することは困難でしょう。基本的に檀家は、菩提寺側が指定するプランで葬儀を実施する必要があるからです。

もし身内でどなたかが亡くなられた場合は、お寺へ連絡して葬儀の相談を行います。このとき「お寺が遠方で参列者の日程調整が困難」「新型コロナウイルスの影響で、移動事態が難しい」といった理由があったとしても、檀家である限り、菩提寺が決めた葬儀の内容や日にちを勝手に変更はできません。基本的に菩提寺が提案する葬儀プランでの実施となります。

近年は、さまざまな供養の形があり、お寺以外にも霊園や樹木葬、納骨堂、永代供養墓、散骨など、人それぞれのライフプランに合わせた墓地が選べるようになったことも、檀家離れが増えた原因といえるでしょう。

菩提寺がない場合

「お寺の檀家になっていないが、お墓を建てられるの?」と心配される方もいらっしゃいますが、菩提寺がなくてもお墓は建てられますのでご安心ください。

菩提寺を持たない方が故人様を供養する場合には、公営霊園や民営霊園、永代供養や納骨堂などの選択肢が一般的です。もちろん、新たにどこかのお寺の檀家になって、寺院墓地を建てることも選択肢のひとつでしょう。

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お寺にお墓をもつメリット・デメリット

お寺にお墓をもつメリット・デメリットを紹介します。寺院墓地の購入を検討している方は、契約前に確認したうえで判断しましょう。

お寺にお墓を持つメリット

お寺にお墓を持つおもなメリットは、以下の通りです。

・お墓が境内にあるため、ご先祖様に手厚く祈りを捧げられる
・葬儀、回忌法要の際、僧侶に読経してもらえる
・四十九日、新盆など、供養の相談が気軽にできる
・法要の依頼が重なった際でも、檀家優先で行ってもらえる
・お寺境内ですべての仏事が可能なため、移動距離が少ない
・住宅地の近くのお寺は、交通の便が良い(霊園は郊外にあるケースが多い)
・お盆やお彼岸の際に供養祭を行ってもらえる

お寺にお墓があれば、僧侶が常駐し、ご本尊様の膝下でご先祖様が守られます。また、いざというときの仏事の相談も、自宅から近ければお墓参りの際などに、気軽に相談することが可能です。

一方、霊園はそういったことができません。霊園では納骨をする際、事前に霊園管理事務所へ連絡し、僧侶を手配するかしないかを相談します。関係性も菩提寺とは異なり、納骨時のみの関係です。よって菩提寺のように、その後の流れを一貫してお任せできる形ではありません。

また、お寺によっては檀家向けに、年中行事の参加を積極的に行なっているお寺もあります。大きなお寺などでは、檀家同士の交流を深めるお寺巡りなど、旅行を企画されるケースもあるようです。

お寺にお墓を持つデメリット

お寺にお墓を持つデメリットは、以下の通りです。

・入檀する際、費用がかかる
・寺院維持のための建物修繕、改修費などに寄付を求められる
・お寺のルールに従う必要がある(葬儀内容や日程などを勝手に決められない)
・葬儀などのお布施(お経料、戒名・法名)がかかる
・お墓のデザインが限定される場合がある
・墓じまいの際、離檀料が必要になる場合がある

最近は、さまざまな理由でお墓を持たない方が増えています。「自分が亡くなった後、お墓を承継する人がいない」「子供たちに負担を掛けさせたくない」など、世代が変わったときに菩提寺と子供たちがきちんとお付き合いできるか心配される方が多いです。そのため、自分達の代で離檀して、お寺ではない違う墓所を求める方が増えています。

離檀する際は、まず新しいお骨の受け入れ先を決めてから、お寺へ離檀料と墓地の撤去費用、墓石から先祖の魂を抜く魂抜き法要の実施が必要です。

毎年の支払いも、霊園などに比べると高いです。霊園は年間管理料を1年に1回決まった金額を納めるのに対し、お寺は年間管理料などの毎年決まった支払いとは別に、修繕費や改修費などが発生する場合もあります。

また、葬儀を行う際には、お寺のルールに沿ったプランとなり、お布施の支払いも大きな負担になるでしょう。

宗派ごとのお墓の形と文字の特徴

最近、お墓に刻まれている正面文字は、昔ながらの「◯◯家先祖代々之墓」と刻まれるケースが少なくなっています。お墓の正面文字を見てみると、宗派によって刻まれている文字が異なっているのが特徴です。本章では、宗派ごとのお墓の形と文字の特徴を紹介します。

日蓮宗

日蓮宗の信仰者のお墓に刻まれる文字は「南無妙法蓮華経」と刻むか、上部に「妙法」の文字を入れて「妙法◯◯家先祖代々之墓」や「妙法◯◯家之墓」と刻むことが一般的です。

日蓮宗の開祖は日蓮です。日蓮宗では、法華経こそが唯一のお釈迦様の教えであると考えられており「南無妙法蓮華経」を唱えることで人々が救われると説いています。

真言宗

真言宗の信仰者のお墓に刻む文字は、特に決まりがありません、大日如来の梵字「ア+◯◯家之墓」、もしくは「南無大師遍照金剛」などと刻むことが多いでしょう。

真言宗の開祖は空海です。お墓の形には、五輪塔などがあります。五輪塔は大日如来を象徴するもので、真言密教の思想から生まれた形です。日本の供養塔、お墓として宗派を超えて用いられています。

浄土真宗

浄土真宗の信仰者のお墓には「阿弥陀仏」や「具会一処」と刻むことが一般的です。お墓に刻む文字で故人を偲びつつ、人間の命の儚さや人々を救う阿弥陀仏の慈悲の力に気づかせる場所がお墓であるという思想があります。なお、浄土真宗の開祖は親鸞です。

浄土宗

浄土宗の信仰者のお墓に刻む文字は、正面に「南無阿弥陀仏」や「具会一処(くえいっしょ:同じ阿弥陀仏の浄土でまた会わせて下さい)」、または阿弥陀如来を表す梵字を家名の上に刻むのが特徴です。浄土宗の五輪塔は、梵字を刻まずに上から「南・無・阿・弥・陀・仏」と刻む場合があります。なお、浄土宗の開祖は法然です。

臨済宗

臨済宗の信仰者のお墓には、正面文字に禅宗の特徴である「円相」を竿石部分に刻むことがあります。円相とは、悟りや心理など円形によって表現したもので「◯◯家之墓」の上部に彫刻されることが多いです。

このほかにも、ご本尊である「南無釈迦牟尼仏」と刻むお墓もあります。臨済宗の開祖は臨済です。また、五輪塔は梵字で上から「空・風・火・水・地」と刻みます。

曹洞宗

曹洞宗の信仰者のお墓にも、墓石に円相を刻むことがあります。一円相(いちえんそう)とも呼ばれ、仏・心の本来の姿・悟り・完全といった意味を示すものです。円相はお墓に刻む以外にも、塔婆の一番上に描いたり、葬儀の引導の時に空中に描いたりすることがあります。

曹洞宗の開祖は道元です。また、五輪塔は梵字で「空・風・火・水・地」を表します。

黄檗宗

黄檗宗の信仰者のお墓には、形や正面文字に決まりはありません。和型墓石の場合、一般的に刻まれるのは「◯◯家先祖代々之墓」や「◯◯家累代」といった家名です。また「お釈迦様を信心します」という意味の「南無釈迦牟尼仏」という言葉を刻んだり、ほかの禅宗と同じように「円相」を文字の頭に刻んだりすることもあります。

黄檗宗の開祖は隠元隆琦です。五輪塔は「空・風・火・水・地」を表す梵字を、上に積まれた石から順番に刻みます。

天台宗

天台宗の信仰者のお墓の形や墓石に刻む文字には、特別な決まりがありません。しかし、基本的には法華経に由来する「南無阿弥陀仏」や「南無釈迦牟尼仏」、そして「◯◯家之墓」と刻むことが多いです。

また、大日如来を表す梵字「ア」や、釈迦如来を表す「バク」、阿弥陀如来を表す「キリーク」が多く使われます。梵字は文字の頭に入れ「梵字+◯◯家先祖代々之墓」と入れるのが一般的です。

天台宗の開祖は最澄です。五輪塔には禅宗系にみられる、下から「地・水・火・風・空」の梵字、日蓮宗にみられる「妙/法・蓮・華・経」のどちらかが多く用いられます。

まとめ

以前までは、寺院墓地にお墓を建てることは当たり前でした。しかし、時代の流れによって、地方から都市部に新しい家を持つご家庭が増え、ご家族の誰かが亡くなるまでお墓を持たないケースが増えています。

お墓の承継者不足により、一代限りのお墓を選択する方が多くなったことで、菩提寺をあえて持たないご家庭も増加傾向です。また、先祖代々のお墓を維持管理することの難しさから、檀家をやめる家も増えています。

今はさまざまな供養の選択肢があるので、菩提寺を持つことの必要性やメリット・デメリットを考慮し、承継する方と相談しながら、自分達に合った供養の形を見つけることが大切でしょう。