神饌(しんせん)の種類や並べ方は?備えてはいけないものも紹介

2022.08.16

神道を信仰される方々にとって、神饌は馴染み深いものでしょう。さまざまな食物や飲み物を備える神饌は、神通には欠かせない儀式です。

しかし、神饌は種類が多く、ルールも細かいので、詳細まで知らない方も多いと思います。そこで今回は、神饌の概要や修理、並べ方、備えてはいけないものなどについて解説するので、この機会に学んでみてはいかがでしょうか。

神饌とは

神饌とは、神道のお供え物の中で外せないもののひとつです。

国語辞典で調べてみると、饌の字には「そなえる。飲食をすすめる。また、そなえもの。食う・飲食する」と書かれています。一方、神は神聖という意味で使われているそうです。

神饌は神祇(天津神、国津神のことで、広くすべての霊性に対する呼称)が食すものといわれています。古くは「御食(みけ)」尊んで「大御食(おおみけ)」ともいわれていたようです。外の呼称としては、御食、御膳(ごぜん)、神膳(しんぜん)、御物(おもの)、御贄(みにえ)があります。

神道における祭祀とは、神祇に対し衣-幣帛、食-神饌、住-社殿を備え奉り、ご存生同様(居ますが如く)に仕えまつることです。その中でも、神饌が第一とされています。

神饌は飲み物と食べ物の大きく2種類です。

飲物は、水や酒。酒の中でも白酒、黒酒、濁酒、清酒に分けられます。食べ物は和稲(籾を除いた米)、荒稲(籾付きの米)、飯、粥、餅、海魚、川魚、貝、水鳥、野鳥、海菜、野菜、果実、菓子、塩などが使用されることが一般的です。

そして、これらの中で特に外せないものが、米、塩、水の三種といわれています。

神饌の由来

神饌は、神道の「神人共食(しんじんきょうしょく)」 という考え方に由来するものです。

人間が神様と同じものを食べることによって、一体感を感じることが目的とされています。そのため、神饌は直会(なおらい)でいただくことが一般的です。

神饌の種類は大きく3つ

神饌には多くの種類がありますが、特に重要視されている3種類の神饌と、それ以外の神饌についてそれぞれ解説します。

1.生饌(せいせん)

生饌とは、調理を行わず生のままお供えする神饌です。

原型、素材のままお供えすることから「丸物神饌」とも呼ばれています。明治8年以降、神饌は統べて生饌とされているため、一社の故実に則す場合を除き、神饌といえば丸物神饌を指すことが一般的です。

2.素饌(そせん)

素饌とは、仏教の影響により魚味、鳥味などを除いた神饌で、「精進神饌」とも呼ばれるものです。

具体的には海魚や川魚、水鳥、野鳥を除いたものが、素饌に該当します。調理の有無に関しては特に規定がなく、宗教者が血の汚れを廃止しはじめ頃から、殺生を避けるために用意したものというのが定説です。

明治8年の生饌を神道の供え物と定めたときに、素饌が使われはじめました。今日、実際に素饌として使われている事例としては、出雲大社の爪剝祭(つまむきさい)において、稲穂や瓜、茄子、里芋、大角豆(ささげ)、水をお供えするものが挙げられます。

3.熟饌(じゅくせん)

熟饌とは調理した神饌のことで、生饌に対し「調理神饌」と呼ばれるものです。

米は精米や飯、粥、餅、粢餅、菓子などに、魚介類は包丁を入れて、塩を加えて調理します。干魚類は首尾を取り除き、海菜、野菜、果物類も調理が必要です。これらを平手、窪手、土器、折櫃に盛って、お供えします。

神饌は神のお食事でもあるため、本来は調理して供えるのが基本だったといわれており、熟饌ではなく「特殊神饌」と呼ばれるケースが多いです。

現在でも、宮中で行われる大嘗祭(だいじょうさい)や新嘗祭(にいなめさい)、伊勢神宮の日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)・月次祭(つきなみさい)・神嘗祭(かんなめさい)。賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)、賀茂別雷神社(かもわけいかずちじんじゃ)の賀茂祭(葵祭 5月15日)、春日大社の春日祭(3月13日)、大神神社(おおみわじんじゃ)摂社率川神社(いさかわじんじゃ)の三枝祭(さいくささい)をはじめ、その他の古社でもお供えとして利用されます。

粢餅(しとぎもち)

粢餅とは、水に浸して柔らかくした生の米をついて粉にし、それを水でこねて丸めた食べ物です。お餅の原型といわれています。

神道では、神棚に不浄火が混じるのを避けるために、生の粢を供えはじめたそうです。神棚に供えた後、いろりの熱灰で焼いて食べるものが、粢餅の始まりだといわれています。

春日祭神饌

春日祭神饌は、御殿の御扉を開くための祭事で供えられる神饌です。

春日祭とは、3月13日に斎行される春日大社の例祭で、もともとは藤原氏の氏長者が祭主として祖先を祀る祭でした。このとき供えられる神饌には、御戸開(みとびらき)の儀に供される御戸開八種神饌(みとびらきやくさのしんせん)と、勅使によって献供される御棚神饌(みたなしんせん)の2種類があります。ちなみに、上の写真は御戸開八種神饌です。

賀茂祭神饌

賀茂祭神饌は、御本殿内陣に供えるための神饌です。

5月15日に行われる賀茂祭は、勅使をはじめ祭儀に奉仕する全員が、冠や烏帽子に葵鬘(あおいかずら)を身につけ、家々の軒や人々も葵をかけることから「葵祭」とも呼ばれています。この祭に供えられる神饌は「内陣神饌(ないじんしんせん)」「外陣神饌(げじんしんせん)」「庭積神饌(にわづみしんせん)」の3種類です。

その他の神饌

ここまでに紹介したもの以外にもたくさんの神饌があるので、一部紹介します。

石清水祭供花神饌「供花神饌」西(左から水仙之臺・椿之臺・菊之臺)

石清水祭供花神饌「供花神饌」西(左から梅之臺・南天之臺・雪持竹之臺)

石清水祭供花神饌「供花神饌」東(左から紅葉之臺・燕子華之臺・牡丹之臺)

石清水祭供花神饌「供花神饌」東(左から橘之臺・櫻之臺・松藤之臺)

9月15日(旧暦8月15日)に行われる石清水祭は「放生会」とも呼ばれます。供花神饌は、草花鳥獣を現わし、神前に12台(6台ずつを東西に分ける)供えることが一般的です。

身取鰒・玉貫鰒・乾鯛
伊勢神宮の月次祭、神嘗祭で供えられる身取鰒(みとりあわび)、玉貫鰒(たまぬきあわび)、乾鯛(ひだい)

貴船神社 特殊神饌
貴船神社の若菜神事で供える、七草がゆ、御飯、塩鯛、飛魚の干物

神饌の並べ方

神道の神饌には、以下のような品目の序列があり、お供えする順番が決められています。私たちの食事でも会席の膳などは、前菜から順に配膳されることが一般的です。

もっとも大事なものが米、穀物となり、最初に供えられます。穀物を醸して作るお酒は2番目です。そして、タンパク質を取らないと人は活力が出ないため、次に魚が供えられます。

鳥は魚の次に大事です、野菜を取らないと栄養が偏ってしまいますので、海菜、野菜の順番で供えます。甘い物も必要なので最後に果物、菓子と続き、お口直しに水、塩と続きます。

1:米
2:酒
3:餅
4:鯛
5:海雑魚
6:川雑魚
7:鳥肉
8:野菜
9:果物
10:菓子
11:嗜好品
12:塩
13:水

上記のうち入手できるものだけを、順列にしたがって備えましょう。よって、すべての品目を準備する必要はありません。ただし、神社や地域によって、順列などが異なる場合もあるので事前に確認しておきましょう。

神葬祭では省略されがちですが、儀式の際には必ず献饌の儀、撤饌の儀があります。しかし今日では、葬儀場に神饌の調理場を設け、そこから霊前(神前)に供える際、一品ずつ運ぶことはなかなか難しい状況です。そのため、祭壇に供えた状態で、蓋を外すスタイルで簡素化することが増えました。また、式前にあらかじめ外しておくケースもよくあります。

日共の並べ方

日供と呼ばれる米、酒、塩、水は、慣れ方にルールがあります。

米、塩、水を並べる場合は、自分から見て奥に米、手前右側に塩、手前左側に水を配置することが神道のマナーです。また、米、酒、塩、水を供える場合には、手前中央に米、手前右側に塩、手前左側に水、奥に2本1対で酒を配置します。

その他の神饌の並べ方

日供以外の神饌は、序列が上のものから右、左、右、左と配置し、日供よりも手前に供えることがマナーです。

また、前後2列に並べる場合は、神様側の神饌を並べた後、自分側のものを並べます。神様側を並べて残った品目のうち、もっとも序列が高いものを中央に配置し、右、左、右、左と序列に従い配置しましょう。

魚は尾頭付きで供えるのが基本です。自分から見て左側に頭、右側に尾がくるように配置します。

神饌の台数

神饌の台数に規定はありませんが、多くても12台までが一般的です。恐らく神社の中でもっとも大切なお祭りでなければ、12台も供えることはないでしょう。

和稲、荒稲、神酒、餅、海魚、川魚、野鳥、水鳥、海菜、野菜、果実、塩、水、山海珍味などを供えます。なお場合によっては、白酒や黒酒、濁酒、清酒を別々に供えることもあるため、その場合は供える台数がさらに増えるでしょう。

また、諸事情により台数を減らしていく場合は、用意するのが難しいものから減らしていきます。昨今では、羽毛付きの鳥や川魚を供えることは、多くありません。魚が手に入らない場合は、スルメや鰹節が置かれることもあります。

最低限供えなくてはいけない神饌は、米、塩、水の3つです。よって、そのほかの品目は、無理のない範囲で準備すればよいでしょう。

神饌をお供えする頻度

神饌を供える頻度は、種類ごとに異なります。

まず、基本的にお米と塩、水は、毎日取り換えます。毎日、朝取り換えることが多いですが、地域によっては朝夕2回の場合もあるため、確認が必要です。

一方、お酒は「月次祭(つきみなさい)の日」と呼ばれる、毎月1日と15日に取り換えます。月次祭は「神様により近づける」といわれていることが、その理由です。

ただし、夏場は食物が傷みやすいので、実際にはもっと早く取り換える必要があります。また、法要などの儀式が開催されるときに、神饌を取り換えるケースも多いです。

なお、お米やお酒、塩、水以外の神饌については、取り換える頻度のきまりは特にありません。

神葬祭に相応しい神饌

神道の葬儀である神葬式も、神饌をお供えします。

神饌は尊い方、大切な方に供える品々なので、米、餅、酒、海魚、海菜、野菜、果物、塩、水を奉ることが一般的です。魚は黒魚が望ましく、餅も白の二重で用意されます。

在りし日のお姿から御霊として鎮まり、永遠に家と家族共に過ごしていただく最初のご挨拶の場が神葬祭です。神饌が少なすぎないよう、7台から8台で用意しておくと安心でしょう。

また、供花や祭壇に供える花も、大切な神饌のひとつといえるでしょう。もちろん、故人様が好きだった食べ物や飲物を供えてあげることも可能です。

神饌として備えてはいけないもの

四つ足動物と香りの強い野菜は、神饌には不適切とされています。

神道には仏教の「不殺生」の考え方が浸透しているため、牛や豚といった四つ足動物を食べることは禁忌とされているからです。

したがって、肉や豚肉、ネギやニンニクを神饌として供えるのは避けましょう。

まとめ

神饌は神道を信仰する方々には、欠かせないものです。また、神道の葬儀でもお供えします。品目ごとの順列や並べ方などのルールが決まっているので、この機会に覚えておくとよいでしょう。

なお葬儀を執り行う際、神饌について不明点などがあれば、我々のような葬儀会社に相談すれば対応してもらえます。

横浜市、川崎市で葬儀行う場合には、実績豊富な弊社、お葬式の杉浦本店にご相談ください。神饌に関する質問はもちろん、葬儀に関する疑問や悩みがある方は、24時間365日、いつでもお気軽にご連絡ください。

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