位牌の起源や種類とは?よくある質問にも回答
2022.07.04
葬儀が終わり火葬を行った後は、故人様の位牌を用意する必要があります。また、位牌にも種類があり、故人様がお亡くなりになった時期に応じて使い分けなくてはいけません。
しかし、位牌を準備することは、一生のうちに何度もあるわけではないので、詳細を知らない方がほとんどでしょう。そこで今回は、位牌の概要や期限、種類に加え、位牌にかんするよくある質問にもお答えします。
位牌とは
位牌とは、中央に故人様の戒名(法名・法号)と俗名、没年月日、行年(享年)が記された木の札です。葬儀では白木の位牌が使われ、出棺時に喪主様が位牌を抱いて挨拶する様をテレビや映画でよく目にします。
位牌は故人様の魂の拠り所といわれており、お仏壇やお寺の位牌壇などに置かれ、故人様の霊をお祀りすることが一般的です。ちなみに、浄土真宗では位牌は使わず「過去帳」や「法名軸」などを代わりに使います。
位牌の起源
各家庭の仏壇に祀られ葬儀や法要など仏式の中で目にすることが多いため、位牌の起源は仏教独自のものと思われがちです。しかし、仏教発祥の地であるインドに位牌文化はありません。
インドではお釈迦様の死後、ご遺骨を納めて祀るためにストゥーパという塔が建てられました。その後、仏教がインドから中国に伝わった際、ストゥーパは「卒塔婆」と音訳され、故人様の戒名や没年月日を書いた長い板に変化したそうです。
また、中国の儒教では葬送の際に、木主(もくしゅ)と呼ばれる板に故人様の官位や名前を書いていました。これらが合わさって、位牌の原型になったようです。
それが中世に禅宗とともに日本へ入り、室町時代頃から武士の間で作られるようになりました。現在のように庶民の間で作られるようになったのは、江戸時代からのようです。今日に至るまで位牌文化が根付いていったのは、日本人の心にご先祖様を大切にする気持ちが強くあったことが理由なのでしょう。
ところで、位牌は頭の部分が丸くなっていることが多く、頭蓋骨を表しているそうです。古代中国では、ご先祖様の頭蓋骨を祀っており、これが先祖崇拝の原型といわれています。直接メーカーに問い合わせたわけではありませんが、位牌の頭がどれも丸いのは、頭蓋骨を模していたことが理由だったのかもしれません。
位牌を仏壇へ置く理由
位牌を仏壇へ置く理由は、ご先祖様をお祀りするためです。
江戸時代の檀家制度がはじまって移行、家庭に仏壇を置く習慣が広まり、仏様を祀るようになりました。本来、仏壇は本尊を仏様にお祀りする場所です。そのため、位牌を置くのは本来の目的ではありませんでした。
しかし、時代の流れとともに、お仏壇に先祖も祀る習慣が浸透し、こちらの役割も強くなり現在の文化として残ったようです。
位牌の種類は3つ
位牌の種類は大きく白木位牌(仮位牌)、本位牌、寺位牌の3種類に分けられます。それぞれの位牌がどのようなものか確認しておきましょう。
1.白木位牌(仮位牌)
白木位牌(仮位牌)とは、四十九日までの仮の位牌で「野位牌」「内位牌」とも呼ばれています。白木位牌には、お寺様が戒名や没年月日などを書くことが多いです。また、戒名紙と呼ばれる紙に、戒名などを書いて貼り付ける場合もあります。
仮位牌は、通常野位牌と内位牌がワンセットです。野位牌は通常、葬儀後に納骨する際、墓標としてお供えします。しかし最近は、当日に納骨することが少なくなったため、野位牌を必要としないお寺様も増えているようです。
内位牌は、葬儀後に自宅へ持ち帰り、四十九日法要まで祀るための位牌です。なお、内位牌は四十九日法要後にお寺様が持ち帰り、お焚き上げで供養することが多いようです。お寺様が無い場合は、本位牌を購入した仏具店や葬儀会社などに相談してみましょう。
2.本位牌(塗位牌・唐木位牌・繰り出し位牌)
本位牌(塗位牌・唐木位牌・繰り出し位牌)とは、四十九日法要を済ませた忌明け後、仏壇に安置する位牌です。大きさは自由に選べますが、ご自宅のお仏壇の大きさに合わせて作ります。ただし、ご先祖様よりも大きく作らないことが多いようです。
本位牌の材質に決まりはなく、好きなものを選べます。漆塗りの「塗位牌」や、木目を生かした「唐木位牌」などが主流ですが、仏具屋さんによっては高級感のあるクリスタルや、デザイン性が豊かなプラスチック製のものもあるようです。
四十九日法要で開眼供養を執り行いお仏壇に安置するため、本位牌は法要日に合わせて作る必要があります。戒名の文字を彫るためには2週間程度の期間が必要なため、できるだけ早めに準備しておきましょう。
ご先祖様が多い場合は位牌も多くなり、仏壇に入りきらないタイミングがやってきます。繰り出し位牌は、1本の位牌に戒名を書いた板が10枚ほど納められるようになっているため、複数のご先祖様を1本の位牌に収めることが可能です。神奈川県でも平塚市や小田原市など県西方面では、繰り出し位牌が利用されるケースが多いと思います。
3.寺位牌
ご自宅に安置する本位牌とは別に、お寺(菩提寺)に安置する位牌を寺位牌と呼びます。お寺の本堂の奥には位牌堂という小部屋があり、檀家ごとに繰り出し位牌が安置されていることが一般的です。
そもそも位牌は本来、菩提寺に安置されるべきものでしょう。しかし、毎日お寺へお参りに行くのは大変なので、その代わりに菩提寺と同じ本尊を掲げて、ご自宅に位牌を安置したものが仏壇です。つまり、仏壇はご自宅に持ってきた小さなお寺といえます。
新しくお寺様とお付き合いが始まる際には、寺位牌についても尋ねておくとよいでしょう。
本位牌の材質と形
近年はたくさんの種類の本位牌が販売されており、おもに材質とデザインにバリエーションがあります。本章では、本位牌の材質とデザインについて確認しておきましょう。
本位牌の材質
本位牌は材質によって、種類が異なります。漆や金箔などをあしらった位牌は塗位牌、黒檀や紫檀などで作られた位牌が唐木位牌と呼ばれ、それぞれまったく見た目が違う位牌です。
特に唐木位牌に使われている黒檀や紫檀などは、色や木目が美しく高級なものとされています。本位牌は作られた材質によって、木目や色合い、雰囲気が大きく異なるため、店頭で現物を確認してから購入するのがおすすめです。
本位牌の形・デザイン
位牌は仏壇に置くものなので、お仏壇にマッチした形やデザインのものを選ぶことが大切です。特に近年はモダン・洋風仏壇などを利用する方が増えているので、一般的な和風の本位牌ではお仏壇とミスマッチになることも想定されるでしょう。
本位牌は基本的に一枚板を削って作られるものですが、デザインによっては土台や角などのディティールが大きく異なります。そのため、形やデザインを細かく確認するためにも、やはり現物を見て、どれを購入するか判断するべきでしょう。なお、本位牌の文字彫りは、手彫りと機械彫りを選択できます。
位牌を選ぶときのポイントと価格相場
位牌を選ぶ際には、前述した材質やデザイン以外にも注意するべきポイントがあります。また、それらを踏まえたうえで、どの程度の価格になるのかも気になるところでしょう。本章では、位牌を選ぶときにポイントと価格相場について解説します。
位牌の大きさ
位牌を選ぶときは、仏壇に入る大きさのものにしましょう。また、お仏壇の主役は、あくまでも本尊であるため、それよりも小さい大きさの位牌を選ぶこともポイントです。
これら2点の条件は必須なので、位牌の大きさにはくれぐれも留意しましょう。
位牌の装飾
位牌に施された装飾によっても、値段が変化します。具体的には漆塗りや金箔などのほどこしかたによる違いです。
漆を塗る量や回数が増えると、乾燥と塗りの工程もそれだけ増え、値段に影響を与えます。また漆ではなく、カシュー塗料やウレタン塗料などを使用した位牌は、比較的安価なものが多いです。
一方、金箔や金粉の量や、蒔絵の細かさなどによっても、位牌の値段が異なります。
位牌の価格相場
位牌の価格は、合成漆で仕上げたものなら1万円程度、唐木位牌は2万円から5万円程度、モダン位牌の価格は3万円程度が相場といわれています。ただし、前述したさまざまな条件によって価格が変動するため、一概にはいえません。
ここまで紹介したポイントの中で、優先度の高いものを決めておくと、予算内で希望に近い位牌を購入しやすくなるでしょう。
位牌に関するよくある質問
葬儀の後、位牌について質問をいただくことが多いため、その中から何点か回答します。位牌を選ぶときの参考にしてみてください。
無宗教ですが戒名が無くても位牌を作ってもよいですか?
無宗教の場合は、位牌を作っても作らなくてもどちらでもよいでしょう。何もないと寂しいという方は、供養の対象として位牌を作ってもよいと思います。
戒名がなくても、生前のお名前(俗名)で位牌を作ることが可能です。戒名はなくても、故人様を偲んで手を合わせる対象があることで、気持ちも落ち着くことでしょう。
位牌を安置する仏壇は、本尊が無くても構いません。また、仏壇も必ずしも購入する必要はないと思います。小さな写真と位牌を並べておけば十分です。
浄土真宗ですが位牌は作りますか?
浄土真宗では、位牌は作らないことがよくあります。浄土真宗の教義は、阿弥陀如来によって極楽浄土へ導かれるというものであるため、位牌に魂を留めて追善供養をする必要は無いことが理由だそうです。
浄土真宗では、位牌ではなく過去帳という帳面に法名(戒名)を書き入れて仏壇に置きますが、礼拝の対象ではありません。しかし成り立ちから考えても、位牌を作ることが間違いとはいえないのため、菩提寺様に相談してみるのはいかがでしょう。
位牌はどのような形がよいのでしょうか?
位牌はメーカーによって、色々な材質や形のものが提供されています。「これがよい」と決まっていることはなく、お好みの材質や形の位牌を選べば問題ないでしょう。ただし、大きさは仏壇に入ることが前提です。また、ご先祖様より大きなものも避けましょう。
彫りと書きではどちらがよいですか?
こちらもお好みです。ご先祖様の位牌がある場合は、合わせてもよいでしょう。
夫婦でひとつの位牌に入れることは可能でしょうか?
基本的に位牌は1人につき1本用意するものですが、「夫婦位牌(めおといはい)」と呼ばれる夫婦連名の位牌を作る場合もあります。生前より仲の良かった夫婦が、亡くなっても極楽浄土で仲睦まじい印象を与えられるようです。
先に片側だけお名前を入れておく方法もありますが、時間が経つことでどうしても字がぼやけてしまいます。よって、見た目の差を出さないようにするためには、再び一緒になるタイミングで新しく夫婦位牌を作るほうがよいでしょう。
まとめ
位牌には長い歴史があることや、必ずしも仏教だけの文化ではないことがお分かりいただけたと思います。ご先祖様を敬い、大切にする日本人の気持ちに根付いたものなので、無宗教の方でも気軽にお求めいただいてよいものだと思います。
本記事の内容を参考に、ご自身の理想に近い位牌を探してみてはいかがでしょうか。