近年、増えている一日葬とは?大まかな流れやメリット・デメリット、費用相場などを解説
2022.05.25
年々お葬式が小規模化している中、一日葬に違和感がなくなり、スタンダードな葬儀として認識されつつあります。
葬儀が小規模化している理由としては、ヒトの寿命が延び、参列する友人も少なくなってしまったことや、ホームで生涯を終え、ご近所とのお付き合いがなくなってしまったことなどが代表的です。また、核家族化が進み、ご親戚と深く関わらなくなってしまったことや、遠方のご親戚をお呼びしたいが負担を減らしたい、また菩提寺がなくお通夜の宗教儀礼が必須ではないことなども、葬儀が小規模化している一因を担っています。
さらに近年は、新型コロナウイルス感染症の影響も、葬儀の小規模化に拍車をかける状況です。
しかしながら、一日葬に関する十分な知識を持っている方は、まだまだ少ないというのが現状でしょう。そこで今回は、一日葬がどのような葬儀なのか、大まかな流れやメリット・デメリット、費用相場などを解説します。
一日葬式とはどんな葬儀なのか?
近年、人々の価値観が多様化したことや、ライフスタイルの変化などによって、ご遺族や参列者様の負担が軽くなる、一日葬を実施するケースが増えています。本章では、一日葬の概要とおおまかな流れを解説するので確認しておきましょう。
一日葬とは
一日葬とはお通夜を行わず、告別式と火葬だけ行う形の葬儀です。一日で葬儀が完結するため、ご遺族や参列者様の負担が軽くなることから、近年実施される方が増加傾向にあります。特に親戚に高齢の方やご多忙な方などが多い方には、最適な方法といえるでしょう。
一般的な一日葬の流れ
一日ですべての儀式を執り行う「一日葬」。どのような流れで行うのか、神奈川県内でよくある具体的な事例を紹介します。以下は、午前9時から開始した流れを想定した事例です。
時間 |
儀式の内容 |
9:00 |
喪主・お話の中心の方々の集合時間 ・お線香でのお参り ・式場の確認(お席・ご供花・思い出コーナー・受付) ・担当者との打ち合わせ(挨拶や弔電の確認、精進落としの追加など変更事項の確認) ・ご葬儀費用のお支払など |
9:30 |
宗教者の到着、ご挨拶とお布施のお渡し ご親戚や一般会葬者の到着後、受付の実施 |
9:45~9:50 |
着席 式の流れやご焼香のタイミングなどについて、葬儀会社のスタッフより説明 |
10:00 |
葬儀・初七日法要開式 |
10:40 |
閉式 ・お別れの準備中に、トイレなどの火葬場に行く準備を済ませる ・バスではなく自家用車で移動の場合は、式場に戻らないため思い出の品などの積み込みを行う |
10:50 |
お花や愛用品を手向けてのお別れ |
11:00 |
ご出棺 |
11:30 |
火葬場へ到着 ・荼毘(ご遺体の火葬) ・火葬を待つ間に精進落としのお食事 ・ご収骨 |
13:00~13:30 |
火葬場で解散、もしくは式場へ移動して解散 |
以上のように、半日の間に多くの儀式を実施しなくてはいけないため、とてもタイトなスケジュールであることがわかります。特に、ご親戚と宗教者の到着時間が重なることに加え、始まる前の確認時間も重なってしまう場合があります。
読経時間が長くなる場合や、ゆっくりと挨拶をされたい場合は、開式時間を早める必要も発生するため、よりせわしなくなることが予想されるでしょう。
一日葬のメリット・デメリット
お通夜を行わず葬儀のみを行う「一日葬」ですが、その名前から手軽にできるイメージがあると思います。ただし、良いところばかりではありません。お通夜を行わないことにはメリットもあれば、デメリットもあります。それぞれについて解説するので、確認しておきましょう。
一日葬のおもなメリット
一日葬のおもなメリットは、葬儀が2日間にわたらないため、遠方のご親戚に宿泊の手間をかけないことです。葬儀の場では慣れないことも多く、非常に疲れるものですが、日帰りのご案内ができるため、参列してもらいやすくなります。
高齢者に負担をかけないことや、仕事や学校を休んでもらう日数が減らせること、また外せない試験などと重なる予定の調整がしやすくなる点も、一日葬のメリットです。また、お通夜とお葬式を行う通常の葬儀に比べ、スタッフの人件費やお布施も少なくて済むでしょう。
さらに、通夜振る舞いにおけるお食事のおもてなし費用も不要なため、葬儀の費用を軽減できる点も一日葬の大きなメリットだといえます。
一日葬のおもなデメリット
一日葬のおもなデメリットは以下の通りです。
せわしくなりがち
式場のお席や思い出の品を並べる場所の確認をはじめ、供花の札や並べ順、受付のやり方の確認、葬儀会社のスタッフとの打ち合わせなど、始まる前の準備時間もあります。また、届いた弔電の確認など、当日でなければできないことを、開式時間までに行わなければいけません。
僧侶と十分に打合せができない
菩提寺・宗教者へのご挨拶を行う際に、四十九日の相談をしたいと思っていても、宗教者の到着時間によっては、しっかりと話す時間がとれないでしょう。
故人様と過ごす時間が限られてしまう
通常の葬儀はお通夜とお葬式を2日以上かけて実施するため、故人様と過ごす時間が一日葬に比べ長くなります。そのため、故人様との十分な時間を取りたい場合には、一日葬は避けたほうがよいでしょう。
ご親戚や参列者様と話す時間が短くなる
打合せや宗教者との挨拶、ご親戚の到着が重なってしまう場合があります。よって、ご親戚やご友人などの一般会葬者と会って話をする時間が圧倒的に少なくなる点がデメリットです。
返礼品が不足する可能性がある
ご友人などの一般会葬者が予定を超えて多数お見えになった場合、返礼品が不足する可能性があります。お通夜があれば、帰る時間が遅く、翌日のお渡しでも問題ないことや、ご親戚分の返礼品を融通するなどの対応が可能です。しかし、当日その場では間に合わないでしょう。
参列者様の予定が合わない可能性がある
お通夜があれば、前日にご親戚の予定の再確認が可能です。しかし一日葬の場合は、開式までに揃わない場合や突然お帰りになる事もあり、精進落としのお食事の数を確認することも大変でしょう。
一日葬を実施する場合の集合時間
「一日葬のときは、何時に行ったらよいのか……」と思う方も多いでしょう。
お通夜であれば、多少時間が前後しても問題はありません。しかし、一日葬の場合は、それぞれの立場によって、行くべき時間が異なります。それぞれの集合時間の目安を紹介するので、参考にしてみてください。
喪主またはご家族
喪主または中心のご家族は、葬儀の決定者にあたるため、開式の1時間前までに到着している必要があります。
ただし、家族だけ10人以内の規模であれば、その限りではありません。しかし、ご親戚がお見えになる前には、葬儀会社のスタッフとの打ち合わせを終えておきたいところです。
菩提寺が遠方からお見えになる場合は、渋滞を考慮して早めに到着することも、しばしばあります。菩提寺のお迎えを鑑みて、早めに着いておくとよいでしょう。
また、思い出の品をたくさん準備して、思い出コーナーを用意したい場合や、持ち込みの返礼品があって支度をする場合、式場内で長めの挨拶を予定している場合などは、1時間前では間に合わなくなる可能性があります。葬儀会社のスタッフへ事前に行いたいことを伝え、お越しになる時間の確認をしておくと安心です。
受付などのお手伝いをされる方
受付などのお手伝いをされる方は、葬儀の規模にもよりますが、ご親戚がお見えになる前に受付の準備と説明があるため、50分~1時間前には到着しましょう。参列者が多い場合には、開式後、ご焼香へ進むのが遅くなることもありますので、到着後、受付を開く前にお線香でお参りをして待つことが一般的です。
遠縁のご親戚
遠縁のご親戚の場合、開式の30~40分前に到着しておくように向かうのがおすすめです。あまりにも早く到着すると、ご家族が葬儀会社のスタッフと打合せをしている場合や、宗教者とお話をしている場合があります。「受付が開いている=葬儀会社のスタッフとの打ち合わせが済んでいる」と覚えておきましょう。
受付を済ませて、お線香でお参りやご面会をしながら、ご家族が話を終えるのを待ちます。ご友人や会社関係など、参列者が多い場合には、受付が混む前の50分ほど前に到着しておくと安心です。
10~15分前に着席の時間となります。お線香でお参りできる場所は、宗教者の準備へ変わります。お線香でのお参りとご面会を開式前に実施したい場合は、着席時間の到着では間に合いません。早めに受付を済ませ、お手洗いなどの身支度を整える時間を考慮して集まるようにしましょう。
精進落としの準備は、ご家族がされていることがほとんどです。火葬場へ行けない、自家用車で向かいたい場合は、前日までに連絡しておきましょう。急な体調不良など、ご連絡が当日になってしまう場合は、着席までにご家族へ伝えておくと手間をかけずに済みます。
なお、遠方から参列する場合など、喪主が到着していない時間に着いた場合は、少し時間調整してから向かうようにしましょう。
ご友人・会社関係の方
ご近所の方や友人、会社関係といった一般会葬者の場合、着席時間の到着では、ご家族にお会いしてお話をすることはかないません。そのため、お写真や寄せ書きなどお渡ししたいものがある場合は、30~40分前には到着したほうがよいでしょう。仕事に戻る必要があるなど、お別れの時間まで参列できない場合も同様です。
着席の時間には、葬儀の支度が済んでいるため、棺の窓が閉じており、お線香によるお参りの場所が宗教者の支度に変わっています。市営斎場や小規模な式場の場合、一般会葬者向けの控室がない場合もあるので、式場内の空いている席にかけて待ち合わせましょう。
着席の時間までは、誰がどこに座っていても文句を言われることはありません。ただし、受付付近の人が多いところで待つと、通路をふさいでいる状況にもなり得ます。式場内後方のお席が空いていれば、そちらで待つほうがスマートでしょう。
お通夜であれば、開式後にお越しになってもご家族は閉式後も式場に居るので問題ありません。しかし、一日葬の場合、閉式後に話をする時間がほとんどありません。火葬場への移動もあるため、お手洗いを済ます時間も必要です。10分前の到着では迷惑になる場合もあることを覚えておきましょう。
一日葬が向いている方の特徴と費用相場
一日葬には前述したデメリットがあるので、検討の際には慎重な判断が必要です。そこで一日葬が向いている方の特徴と費用相場を紹介するので、検討時の参考にしてみてください。
一日葬が向いている方の特徴
親戚に高齢者や多忙な方が多い、コストを抑えたい方には、一日葬が向いています。
一日葬のスケジュールやメリット・デメリットを鑑みると、一日葬にすべきか、お通夜も行ったほうがよいのか迷う方も多いでしょう。「一日で終えられるから」という理由だけで選んではいけないことがわかります。
お通夜で終えられることも、すべて葬儀の日に行わなければならないのが一日葬です。例えば、人数がまったく読めない場合や、たくさんの参列者がお越しになる場合は、お話をする時間がほぼとれないため、一日葬は向いていません。
ご友人や会社関係などの一般会葬者は火葬場へ行かないので、なおさらお話をする時間が取れないと考えたほうがよいでしょう。小規模であっても、限られた時間の中で忙しく過ぎてしまう可能性があるため「近しい方だけで故人の話をしながら家族葬を行いたい」「故人様とたくさん過ごしたい」といった希望が強い場合も、一日葬があまり向いていないことがわかります。
一日葬の費用相場
一日葬の費用相場は、30~100万円程度といわれています。ただし、地域や宗派、葬儀の規模などによって幅があるので、事前に葬儀会社のスタッフに確認しておきましょう。
お通夜とお葬式を執り行う一般葬に比べ、比較的安価に執り行える点が特徴です。しかし、豪華な祭壇や柩、お花などを用意したい場合は、費用が高くなる可能性があります。
まとめ
価値観の多様化やライフスタイルの変化によって、一日葬を選ぶ方が増えています。一日葬にはご遺族や参列者様の負担を下げるといったメリットもありますが、多くのデメリットもあるので、実施する際には慎重に判断しましょう。
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