「ご冥福をお祈りいたします」の意味とは?伝えるときの注意点などもご紹介

2023.10.06

お通夜やお葬式に参列する方は、ご遺族に「ご冥福をお祈りいたします」とお声がけすることが多いでしょう。普段何気なく使っている言葉ですが、どのような意味が込められているのかについて、詳しく知っている方は少ないかもしれません。

また「ご冥福をお祈りいたします」はお通夜や葬儀で使用する言葉のため、マナーを遵守することも大切です。ここでは「ご冥福をお祈りいたします」の意味や、使用時の注意点などをご紹介します。

ご冥福の意味とは

「ご冥福をお祈りします」の「ご冥福」とは、そもそもどのような意味なのでしょうか。ここでは、まずご冥福の意味について、仏教の観点からも掘り下げて解説します。

ご冥福という言葉の意味

仏教を由来とする「ご冥福」は、故人様に向けて使用される言葉です。日本には令和4年現在、仏教系の宗教を信仰している人が8,300万人程度いるため、文化に根付いた言葉といえるでしょう。

「ご冥福」の「冥」は「冥土」を表し、死後の世界という意味です。仏教の教えでは、人が亡くなってから四十九日間「冥土の旅」と呼ばれる死後の旅に出ると信じられています。

故人様の行先は六道と呼ばれる場所で、天上道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の6つです。

参考:文化省/令和4年の宗教統計調査の結果を公表します

仏教における追善供養

追善供養(ついぜんくよう)とは、ご遺族など生きている人々が、故人様のご冥福を祈って行う供養のことです。仏教では、故様人のために善を積むことによって、故人様がより良い世界に生まれ変われるような応援につながるとともに、その善行が自分自身にも返ってくると考えられています。

故人様が旅をしている最中は、7日ごとに閻魔大王などの十王によって、生前の行いを裁かれるといわれています。そして四十九日目には、冥土の入り口で7回目の裁き(七七日:しちしちにち)が下され、死後の行き先が決まるそうです。

つまり、故人様が亡くなってから四十九日の間は、死後の行き先が決まってない状態のため、ご遺族も死を悼み慎んだ行動をとらなくてはいけません。またご遺族は、故人様の苦しみの緩和、極楽浄土行きを願って追善供養を行います。

本来は故人様が亡くなった後、7日ごとに法要を行うことが通例でした。しかし、近年は省略されることが多く、最終審判である四十九日に盛大な法要を行い、供養する形式が一般的です。また、仏教では四十九日のことを「忌明け」と呼び、喪に服していたご遺族が日常に戻る日とされています。

追善供養の種類

追善供養は、四十九日法要以外にも、さまざまな種類があります。例えば、四十九日の十王の審判によって、六道のうち望まない世界へ転生してしまった故人様に対する救済処置の法要は、以下のとおりです。

・百か日法要:故人様が亡くなってから100日
・一周忌:故人様が亡くなってから1年
・三回忌:故人様が亡くなってから2年


死者の生前の罪は、ご遺族の追善供養によって、減罪することが可能です。そのため仏教においては、四十九日だけでなく一周忌や三回忌も重視されています。

四十九日までの追善供養を中陰法要と呼び、それ以降、故人様の命日(忌日)にあわせて執り行う法要が年忌法要です。おもな追善法要としては、以下のようなものが挙げられます。

・一周忌
・三回忌
・七回忌:故人様が亡くなってから6年
・十三回忌:故人様が亡くなってから12年
・十七回忌:故人様が亡くなってから16年
・二十三回忌:故人様が亡くなってから22年
・二十七回忌:故人様が亡くなってから26年
・三十三回忌:故人様が亡くなってから32年
・五十回忌:故人様が亡くなってから49年

三十三回忌を弔い上げとして、故人様が完全に成仏したという考えのもと、年忌法要を終えることが多いです。また近年は、年忌法要の簡略化が進んでいます。一周忌から三回忌までは故人様と関係の深い方も招く場合がありますが、七回忌以降はご親族だけで行うことがほとんどです。

「ご冥福をお祈りいたします」の意味とは

「ご冥福をお祈りします」とは、故人様が安らかに眠れること、また故人様が次の世界で幸せになることを心から祈っているという意味を表す言葉です。この表現は、葬儀や法要などでよく使われ、故人様への敬意と哀悼の意を示します。

「ご冥福をお祈りいたします」は、お悔みの言葉の1つです。「冥」には「深い・暗い」といった意味があり、死後の世界を表します。「福」は幸せを表します。したがって「ご冥福をお祈りいたします」は「死後の幸せをお祈りいたします」、もしくは「死後の世界、極楽浄土に無事にたどり着けますように」という気持ちを表す言葉になるわけです。

代表的なお悔みの言葉

「お悔みの言葉」とは、故人様のご家族や親しい人々に対して、哀悼の意を示すために使われる言葉です。お悔みの言葉は、故人様を偲び、ご遺族を慰めるためのものであり、その選び方や使い方には注意が必要です。ここからは「ご冥福をお祈りいたします」以外の、代表的なお悔みの言葉をいくつかご紹介します。なお、これらの言葉は一例であり、具体的な言葉は状況や関係性に応じて最適なものを選択しなくてはいけません。

「お悔やみ申し上げます」

故人様の死を悲しみ、弔いの言葉を伝えるお悔みの言葉。故人様の死を深く悼んでいることを示すとともに、ご遺族に対する同情の意も示します。

「ご愁傷様です」

心の傷を憂い、相手を気の毒に思うことを伝えるお悔みの言葉。ご遺族がどれほど悲しんでいるかを理解していることを示し、同情の意を表します。

「哀悼の意を表します」

故人様の死を悲しみ、悼んでいる気持ちを伝えるお悔みの言葉、故人様の死を深く悼んでいることを示すとともに、ご遺族に対する同情の意も示します。

「残念でなりません」

故人様の死が非常に悔しく、心残りであると伝えるお悔みの言葉。

「ご冥福をお祈りいたします」を伝える際の注意点

「ご冥福をお祈りします」は一般的に使用される言葉ですが、利用する際はマナーを守らなくてはいけません。ここでは「ご冥福をお祈りします」を伝える際、注意すべき点について解説します。

忌み言葉の使用を避けること

「ご冥福をお祈りいたします」を伝える際には、忌み言葉を避けることがマナーです。忌み言葉とは、不幸が続くことを連想させるため、信仰上の理由やお葬式や葬儀、告別式、結婚式など、特定の場において使用を控えるべき言葉をさします。

「ご冥福をお祈りいたします」を伝える際に、一緒に使用することを避けるべき忌み言葉は以下のとおりです。

・仏式葬儀における忌み言葉:「浮かばれない」「浮かばれぬ」「迷う」など
・神式・キリスト教式葬儀での忌み言葉:「成仏してください」「供養」「冥福」「往生」など
・不幸や死を連想させる忌み言葉:「焦る」「敗れる」「憂い」「散る」「悲しむ」「無し」「無くす」「おしまい」など
・繰り返す重ね言葉:「わざわざ」「再三再四」「たまたま」「重ね重ね」など
・つい言ってしまいがちな忌み言葉:「最後に」「終わりに」など

なお、忌み言葉の詳細については、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

関連記事:『お悔みの言葉はマナーが大切!忌み言葉や例文、メールやLINEの出し方も紹介』

利用シーンに応じた注意点

「ご冥福をお祈りいたします」は故人様のご冥福を祈る言葉であり、哀悼の意を表すものです。葬儀や告別式、法要などで直接伝える場合や、電話、メール、LINEなどで伝える場合があります。ここでは、それぞれの利用シーンに応じた注意点を確認しておきましょう。

お通夜や葬儀など対面

故人様に対して「ご冥福をお祈りいたします」を伝える場合は、故人様の遺影に向かって一礼し、手を合わせてから言葉を述べます。ご遺族に対して伝える場合は、ご遺族に近づき、手を合わせてから「ご冥福をお祈りいたします」と伝えましょう。

またお悔みの言葉に加えて、自分の気持ちを丁寧に相手に伝えることが重要なポイントだといえます。そのため、お通夜や葬儀などで使うときは「○○様のご冥福をお祈りいたします」と、故人様に宛てたものであることが分かるように、最初に「○○様(故人様の名前)」または「故人様」と主語をつけるほうがよいでしょう。

メール

メールで「ご冥福をお祈りいたします」を伝える場合は、相手との関係性に応じた敬称を使用しましょう。また、そのほかのお悔みの言葉も含め、簡潔であることが望ましいです。忌み言葉や不幸が繰り返されるような表現は、使用しないようにしましょう。

LINE

LINEで「ご冥福をお祈りいたします」を伝える場合は、普段通りのくだけた印象のメッセージは適切ではありません。失礼にならないよう、丁寧な言葉遣いを意識しましょう。また絵文字や顔文字、スタンプの使用は控えましょう。相手によっては、軽い印象やネガティブなイメージで受け取られてしまう可能性があるためです。

電話

電話で「ご冥福をお祈りいたします」を伝える場合は、相手と直接話すことができるため、丁寧な口調で話すように心がけましょう。相手が気分を害するような言葉を避けるとともに、忌み言葉も使用しないよう注意が必要です。

宗教ごとの注意点

「ご冥福をお祈りいたします」を使用する際、気を付けたいのは、宗派によっては不適切な場合があることです。厳密に言えば使用は禁止されていません。しかし、気にされる方もいるため注意しましょう。先ほど、ご紹介したようなほかのお悔みの言葉もあるため、どの宗派の葬儀に行っても困らないように覚えておくことが大切です。

ここでは、おもな宗教における「ご冥福をお祈りいたします」の扱いについて解説します。

浄土真宗

浄土真宗の葬儀では「ご冥福をお祈りいたします」の使用は控えましょう。浄土真宗では、亡くなられた方は即、仏様になる「即身成仏」という教えがあります。生前に南無阿弥陀仏を唱えれば亡くなった直後に仏様になり、極楽浄土にいけるという考えです。

浄土真宗において「ご冥福をお祈りいたします」は「死後の世界である冥界に迷い込む」という意味に捉えられます。そのため、浄土真宗の葬儀では「お悔みを申し上げます」というお悔みの言葉を使用するのが無難です。

またお花入れやお別れの掛け言葉として、通常は「故人様の安らかなるご冥福をお念じ頂きまして、ご一同様合掌をお願い致します」などが使われますが、浄土真宗では「ご冥福」はNGのため「安らかなるお眠り」など言葉を変えることが必要です。

即身成仏する浄土真宗における四十九日法要は、故人様に感謝を伝える、ご遺族の心を癒す場という意味があります。したがって他宗派とは異なり、故人様への旅立ちのごはん団子などのお供え物は必要ありません。

また、浄土真宗での法要は追善供養としての意味はなく、成仏に導いてくれる阿弥陀仏への信心をささげるための儀式です。

神道

神道においては、故人様がご先祖様とともに家の守り神になると考えられています。死後の世界である「冥土」の思想とは、考え方が異なるため注意しなくてはいけません。

そのため、神道の葬儀でかけるお悔みの言葉としては「御霊のご平安をお祈りします」、または「後安霊の安らかならんことをお祈りします」といった言葉を使うことが多いようです。
また「成仏」や「供養」など、仏教用語も避けましょう。

キリスト教

キリスト教において、死は祝福されるべきものと考えられています。亡くなったことを悔やむのではなく、天国での平安を願うため、キリスト教の葬儀ではお悔みの言葉は使いません。

キリスト教における死は「地上での罪を許されて天に召される」ことを表します。したがって、お悔みの言葉は「安らかなお眠りにつかれますよう、お祈りいたします」といった言葉で伝えるのが無難です。

イスラム教

イスラム教における、一般的な故人様へのお悔やみの言葉は「インナ・リラーヒ・ワ・インナ・イレイヒ・ラージィウーン」です。アラビア語で「我々はアッラーのものであり、最終的にはアッラーに帰するものである」という意味があり、ご家族や親しい人々が故人様の死に対する悲しみを表すために使用されることが多いようです。

「ご冥福をお祈りいたします」に対する返答

お通夜や葬儀で参列者から「ご冥福をお祈りいたします」と言われた際には、故人様の変わりとなり感謝の意を伝えましょう。遺族としてお悔みの言葉をかけてもらったときに一般的な返答として使われる表現として、以下3つの表現が一般的です。

「お気遣いいただきありがとうございます」
「お心遣い痛み入ります」
「恐れ入ります」

「生前は、○○(故人様)が大変お世話になりました」など、感謝の気持ちを伝える言葉を加えることも大切です。また、その場の状況により、どうしても言葉が出てこないときは、無理に返事をしようとせず、一礼するだけでも問題はありません。

まとめ

「ご冥福をお祈りいたします」はお通夜や葬儀など、正式な場所での言葉となります。失礼に当たらない言葉を選択するのが、大人のたしなみです。

「ご冥福をお祈りいたします」は一般的に使われる言葉ですが、意味合いを知らないで使い、相手の印象を損ねてしまう場面もあるでしょう。お通夜や葬儀に参列する際には「ご愁傷様でございます」「お悔やみ申し上げます」といった、宗旨や宗派を問わず使いやすい言い換えの言葉を覚えておくことも大切です。

お通夜や葬儀は故人様とのお別れの場であるため、悔いのないように対応しましょう。