葬儀後の手続きや優先順位とは?やることリストで滞りなく対応

2022.08.15

私たちが日々の社会生活を円滑に進めるためには、さまざまな手続きや届け出が必要です。特に葬儀の後は、手続きや届け出が集中します。

ご家族やご遺族は悲しみにさいなまれる中、粛々と多くの手続きを進めなければいけません。そこで今回は、葬儀後の手続きや優先順位について解説します。また、葬儀前後のやることリストも準備したので、皆様の心理的な負担が少しでも軽くなるよう、お役に立ててもらえれば何よりです。

葬儀前に必要な手続き(故人様の死後7日以内)

故人様の死後2週間以内には、特に多くの手続きが集中します。本章では、故人様の死後7日以内に行わなくてはいけない手続きについて確認しておきましょう。

死亡届の提出

故人様の死亡の事実を知った日から7日以内(国外にいる場合は3か月以内)に、ご親族は死亡届を提出する必要があります。しかしながら、近年は葬儀会社のスタッフが代行することがほとんどです。

死亡届の提出先は、死亡者の本籍地、死亡地、または届出人の所在地のいずれかの市区町村役場の戸籍窓口と定められています。医師による死亡診断書を入手しましょう。(事故などの場合は、警察の検死を経た後、死体検案書を入手)

死亡届はご遺族が記入します。なお、捺印の記載がありますが、厚生労働省の改正により捺印はなくても大丈夫になりました。

死亡届の提出により、故人様の戸籍の変更、住民票の抹消、税務署への通知が行われます。死亡届を提出しても金融機関などの口座は止まりません。金融機関窓口で故人様が亡くなった旨を伝えることで、口座が凍結されます。

死亡診断書の写しは葬儀後、公的証明書としてさまざまな手続きに必要になります。例えば、年金受給停止の手続きや埋葬料の請求、資格停止、生命保険の請求などです。そのため、必ず何枚かコピーを取っておきましょう。

参考:厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課/押印を求める手続の見直し等のための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令(概要)について

火葬許可書(埋葬許可書)の交付

区役所などに準備されている死体火葬許可交付申請書を、死亡届と死亡診断書と一緒に提出し、死体火葬許可書を交付してもらいます。死体火葬許可書は死体火埋葬許可書と呼ばれることがあるなど、地域によって名称が若干異なるため注意しましょう。

死体火葬許可書は、葬儀当日に必ず火葬場へ提出しなければいけない書類です。この書類が無ければ、火葬は行えません。また死体火葬許可書は、火葬後に日付と火葬場の名称が記入され、ご遺族へ返却された時点で埋葬許可書に変わります。

埋葬許可書を紛失すると再発行がとても難しく、なければご遺体を埋葬できません。埋葬時に必ず必要になる大事な書類のため、火葬場で収骨の最後に、係の方が骨壺と一緒に骨壺箱へ入れてくれます。

なお、死亡届の提出と火葬許可書の発行・受け取り、火葬許可書の火葬場への提出については、葬儀会社のスタッフが代行してくれる場合がほとんどです。死亡診断書のコピーも取ってくれます。現在は印鑑を預ける必要がないため、ご家族やご遺族が提出することもできますが、葬儀会社へ任せたほうがよいでしょう。

死亡診断書のコピーが、さまざまな手続きで必要になるのは基本的に葬儀の後です。ただし、先に必要になる場合も稀にあるため、コピーを数枚とっておくことをおすすめします。特に葬儀まで日にちが長い場合などは、なおさらでしょう。

参考:厚生労働省/墓地、埋葬等に関する法律の概要

治療中の方がご自宅で亡くなったときの注意点

治療中の方がご自宅で亡くなった場合は、主治医の先生を呼んで死亡診断書を発行してもらいます。慌てて救急車を呼ぶと検死のプロセスに入り、原因確定のためにご遺族が取り調べを受ける可能性もあるでしょう。

なお検視とは、事故死など突発的要因で亡くなった方について、検察官や認定された警察職員司法警察員によって、身元確認や犯罪性の嫌疑の有無を調べるために行われる手続きのことです。しかしこれらのケース以外は、葬儀後に行う場合がほとんどでしょう。

したがって忌引の休暇などは、葬儀後に何日か残しておくことをおすすめします。葬儀前にしなければいけないことが、思いのほか少ないからです。

葬儀後に必要な手続き

葬儀が終わった後も、やることは目白押しです。優先順位の高いものから順番に紹介します。

健康保険・厚生年金保険の資格喪失の手続き(5日以内)

故人様が亡くなって5日以内に健康保険、会社員だった場合は厚生年金保険の資格喪失手続きが必要です。従業員が死亡したとき、または健康保険、厚生年金保険の資格を喪失した場合は、事業主が被保険者資格喪失届を提出します。

なお、国民健康保険の資格喪失手続きは、戸籍の届出(死亡届の提出)により自動的に資格喪失の手続きがなされます。

参考:日本年金機構/従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き

国民年金・厚生年金の受給停止の手続き(10日~14日以内)

国民年金や厚生年金をもらっていた方が死亡した場合は、厚生年金は本人の死亡後10日以内、国民年金は14日以内に受給停止の手続き行わなくてはいけません。年金受給者死亡届と年金証書、死亡を確認できる公的証書(戸籍謄本・死亡診断書等)を社会保険事務所、または住民票のある市区町村へ提出しましょう。

年金停止手続きをしないままでいると、引き続き支払われてしまいます。ご遺族がそのまま年金を受け取っていた事実が分かった時点で、本人の死亡後に受け取った金額を一括して返却しなければなりません。この返却手続きは大変面倒なので、事前に手続きを行って回避しましょう。

世帯主の変更届(14日以内)

故人様がお亡くなりになってから14日以内に、世帯主の変更届を提出します。お住いの市区町村の戸籍・住民登録窓口へ、届出人の印鑑と本人の確認ができるもの(免許証・パスポートなど)を提出しましょう。

ただし、故人様が世帯主でない場合は、世帯主の変更届は必要ありません。

参考:大阪市/世帯変更届(世帯主が変わったときや、世帯を分けたとき)

国民健康保険の葬祭費・埋葬費の申請(なるべく14日以内)

故人様が国民健康保険(75歳以上の人は後期高齢者医療制度)に加入していた場合には、
3万円~5万円(各市区町村により異なる)の葬祭費が支給されます。故人様がお亡くなりになってから、できるだけ14日以内に住所地の市区町村の健康保険窓口へ、葬祭費支給申請書と公民健康保険証、葬儀会社の領収書を提出しましょう。

なお、葬祭費の申請期限は2年以内ですが、ほかの手続きと同時に行うと手間が省けます。また、葬儀の実行が支給条件なので、葬儀会社の領収書が必要です。

一方、故人様が会社の国民健康保険に加入していた場合は、埋葬料として一律5万円を受け取れる請求手続きもできます。健康保険組合、または社会保険事務所へ健康保険埋葬料請求書と健康保険証、死亡診断書コピーを提出しましょう。ただし、埋葬料の請求手続きは、勤務先で代行してくれるケースがほとんどです。総務や人事の方へご確認ください。

また、電気やガス、水道、電話、公団の賃貸住宅なども、それぞれの窓口に連絡して名義変更の手続きをします。事前に電話などで確認しておくと、手間が省ける場合があるでしょう。

参考:北区/葬祭費(国民健康保険)

参考:全国健康保険協会/ご本人・ご家族が亡くなったとき

遺言状検認・相続放棄の手続き(3か月以内)

自筆証書遺言書が存在する場合は、故人様がお亡くなりになってから3か月以内に、遺言状の検認手続きを行わなくてはいけません。検認とは家庭裁判所で自筆証書遺言書の事実を調査し、遺言書の「現状」を確保するための手続きです。検認の日に内容を明確にして以後、偽造(書き換えられるなど)されないようにします。

被相続人の住所地の家庭裁判所に、遺言書原本と遺言者の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、受遺言(遺言で財産の贈与を受ける方)の戸籍謄本を提出して手続きを行いましょう。

一方、故人様の負債が大きいといった理由により、相続を放棄したい場合は、相続人であることを知ってから3か月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所で相続放棄の手続きを行う必要があります。相続放棄とは、被相続人が残した財産を一切継承しない旨の意思表示を行うことです。

相続放棄をした方は、初めから相続人でなかったことになります。また、負債の存在を知らなかったことが裁判所に認められれば、3か月以後でも相続放棄を認めてもらうことが可能です。

参考:裁判所/遺言書の検認

参考:裁判所/相続の放棄の申述

所得税準確定申告・納税の手続き(4か月以内)

故人様が自営業者や副収入があったなど、生前でも確定申告が必要だった場合は、4か月以内に所得税準確定申告・納税の手続きが必要です。また、年収2千万円以上のサラリーマンだった場合も、手続きを行わなくてはいけません。

故人様の住所地、または勤務先の税務署で、亡くなった年の1月1日~亡くなった日までの所得の申告書(源泉徴収票)と生命保険の領収書、医療空所証明書を準備して手続きを行いましょう。なお、1か所からのみ給与を受けていた会社員などは、基本的に手続きは不要です。

参考:国税庁/No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)

高額医療費払い戻し・生命保険の請求手続き(2年以内)

故人様が国民健康保険に加入しており、多額の医療費を支払った場合には、後期高齢医療制度の高額医療費払い戻し手続きを2年以内に行うことが可能です。

被保険者(故人様)の健康保険組合、または社会保険事務所、市区町村の役所(健康保険課)の窓口で、高額療養費支給申請書と高額医療費用払い戻しのお知らせ案内書、健康保険書、医療費の領収書、印鑑、受取人の振込先がわかるものを準備して、手続きを行いましょう。

健康保険組合の一部では、自動的に払い戻してくれるところもあるようです。また、医療費を払った2~3か月後に、健康保険の担当者から高額医療費の払い戻しの案内(おもにハガキ)が送られてくることもあります。

一方、故人様が生命保険に加入していた場合には、請求によって死亡保険金が支払われるので、生命保険の請求手続きを行いましょう。保険会社の担当者に連絡し、死亡保険金請求書や保険証書、最後の保険料領収書、保険金受取人と被保険者の戸籍謄本、死亡診断書、受取人の印鑑証明書などの必要書類を準備して手続きを行います。

なお、どの保険会社でも、請求人による支払いの手続きがなされない限り、保険金は
支払われません。

参考:全国健康保険協会/高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)

遺族年金の請求(5年以内)

故人様が国民年金や厚生年金に加入していた場合は、遺族年金の請求を5年以内に行いましょう。

国民年金基金の遺族年金(正式名称は遺族基金年金)とは、国民年金の加入者、または老齢基礎年金の資格期間を満たしていた方が亡くなった場合に、遺族へ支給される年金です。故人様の住所がある自治体役場の担当窓口で、手続きが行えます。

一方、故人様が厚生年金に加入していた場合に遺族が受給できる年金が、遺族厚生年金です。国民年金と同時受給が可能なため、手厚い受給が受けられます。各都道府県の年金事務所で手続きを行いましょう。

参考:日本年金機構/遺族年金

相続確定後に行う手続き

不動産や預貯金、株式、生命保険、自動車など、故人様の財産は死亡後から相続人全員の共有財産になります。誰が何を相続するか確定してから名義変更を行います。ただし遺言書があり、すぐに相続に決着がつかない場合は、専門化への依頼も視野にいれなくてはいけません。

なお、故人様の財産を相続するときには相続税を支払う必要があるので、以下の記事も併せてご確認ください。

関連記事:相続税とは?申告するべき税額や税率の計算方法などを解説

葬儀前後のやることリスト

ここまでに紹介したものを含め、葬儀前後にやることをリスト化したので、ぜひご活用ください。

やるべき公的手続き

備考

年金受給停止の手続き

国民年金は14日以内

介護保険資格喪失届

14日以内

住民票の抹消届

14日以内

世帯主の変更届

14日以内(故人様が世帯主だった場合)

雇用保険受給資格者証の返還

1か月以内(故人様が雇用保険を受給していた場合)

所得税準確定申告・納税

4か月以内(故人様が自営業、または年収2,000万円以上のサラリーマン、副業収入がある場合)

相続税の申告・納税

故人様がお亡くなりになった日の翌日から10か月以内(相続財産が基礎控除の場合)

国民年金の死亡一時金請求

2年以内

埋葬料請求

2年以内(故人様が国民健康保険加入者の場合)

葬祭料・家族葬祭料請求

葬儀から2年以内(故人様が船員保険加入者の場合)

葬祭費請求

葬儀から2年以内(故人様が国民健康保険加入者の場合)

高額医療費の申請

対象の医療費支払いから2年以内(故人様が70歳未満で医療費の自己負担額が高額な場合)

遺族年金の請求

5年以内

 

生命保険・名義変更・相続などの手続き

備考

遺言書の検認

遺言書が公正証書でない場合

相続放棄

3か月以内(相続財産をすべて放棄する場合)

生命保険金の請求

2年以内(故人様が生命保険に加入していた場合)

不動産の名義変更

相続確定後

預貯金の名義変更

相続確定後

株式の名義変更

相続確定後

自動車所有権の移転

相続から15日以内

電話の名義変更、または解約

なるべく14日以内

公共料金の名義変更、または解約

なるべき14日以内

クレジットカードの解約

相続確定後

運転免許証の返納

故人様がお亡くなりになった後、速やかに

パスポートの失効手続き

故人様がお亡くなりになった後、速やかに

 

まとめ

葬儀前後は、大切な方を失った悲しみの中、あわただしく時間が過ぎていきます。やるべきことも非常に多く大変だと思いますが、役所や各担当窓口の方が現地で教えてくれますので、あまり難しく考えないようにしましょう。今回紹介した内容を参考に、必要な書類については、事前に確認しておいたほうがよいと思います。また、手続きの前日などに電話などで確認もしておくと安心です。

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