散骨とは?メリット・デメリットや種類などをご紹介

2023.05.11

近年、故人様を供養する方法には多くの種類があります。その中の1つが散骨です。

「散骨」といえば、なんとなく海にお骨をまくイメージをもつのではないでしょうか。しかし、散骨にはさまざまな種類があります。また散骨による供養を行う場合は、事前にメリット・デメリットなどについても把握しておくべきでしょう。

そこで今回は散骨をテーマに、メリット・デメリット、費用相場、種類などについてご紹介します。

散骨とは

散骨とは故人様の埋葬や納骨をせず、粉骨(ふんこつ)した遺骨を海や山にまく供養方法です。散骨は、ご遺体を火葬した後で粉末状にすることにより、海や山などの自然にまく供養の方法であり、一部のご遺骨を手元に残す方法もあります。

散骨は近年、注目を集める自然葬の1つです。霊園や納骨堂など特定の場所に埋葬せず、ご遺骨をまいて供養します。散骨を希望される方は、事前にご家族へ「自分が亡くなったら海にまいて欲しい」と伝えている場合が多いです。また承継者問題もないため、ご家族に負担をかけたくない方々にも人気があります。

散骨は、法律的に問題はありませんが、マナーや注意点はあります。例えば散骨する場所は、決められた場所で実施しなくてはいけません。散骨を実施する際には、周辺住民や自然環境への配慮が必要です。

今では、散骨が聞き慣れた言葉になりました。しかし以前までは、供養の方法としては一般墓が主流だったといえます。人によって異なる死生観をもつため、現在は一般墓だけでなく、樹木葬や納骨堂、散骨、永代供養墓など、時代背景とともにさまざまな形態のお墓を選択できるようになりました。

そのため、自分たちの理想にあったお墓をみつけやすくなったのは、よいことだといえるでしょう。

散骨による5つのメリット

近年、散骨を実施する方が増えた背景には、どのような理由があるのでしょうか。ここでは、散骨を実施することによって、故人様やご遺族が得られるメリットをご紹介します。

メリット1.故人様の意思を反映できる

散骨は、故人様の意思を反映できる点がメリットです。例えば、故人様が生前「海が好きだから自分が亡くなった際は、海にまいてほしい」と言い残していた場合、散骨であれば残されたご家族が意思を尊重できます。

また散骨を行う際には、手元に一部を遺しておく「手元供養」という方法を選択することも可能です。手元供養では、小さなペンダントやアクセサリーにご遺骨を入れて身につけたり、お守りとして持ち歩いたりすることもできます。

メリット2.費用を抑えられる

故人様を供養するための費用を抑えられることも、散骨によるメリットの1つです。散骨に必要な費用は、基本的にご遺骨を粉骨する費用と散骨する費用となります。実施方法にもよりますが、散骨はお墓に埋葬する場合と比べ、10分の1以下で費用を抑えることも可能です。

メリット3.維持費がかからない

散骨は、墓地に埋葬する場合に比べて維持費を抑えられる点もメリットです。墓地の維持費や管理費が不要なため、維持費もかかりません。また「誰にお墓を承継するか」などの問題もなくなります。

メリット4.精神的・時間的な余裕が生まれる

散骨の場合はお墓がないため、お彼岸やお盆などでも、ご遺族には「お参りへ行かなければ」といった気持ちの負担はありません。そのため、精神的な余裕が生まれます。

また、墓参りやお墓の管理などにかかる時間的な負担も軽減されるため、時間的な余裕も生まれる点もメリットです。

メリット5.移住地を自由に選択しやすい

散骨を行うことにより、故人様が希望した場所にご遺骨をまくことができるため、移住先を自由に選びやすくなります。また散骨は、墓地の維持・管理費用がかからないため、経済的にも移住しやすくなる点はメリットです。

お墓を建てた場合、先祖代々のお墓を引き継ぐ必要があるため、ご家族は墓地の近くから移住することが難しくなります。また「自分の代で先祖が住んでいた土地からご遺骨を移動させてよいだろうか……」という問題もあり、簡単には移住ができなくなるでしょう。

しかし散骨であれば、お墓を持たないため躊躇なく移住しやすくなります。

散骨による3つのデメリット

メリットの多い散骨ですが、デメリットも存在します。実施検討の参考にするため、どのような内容なのかを確認しておきましょう。

デメリット1.ご遺骨が残らない

散骨を行うと、ご遺骨は粉骨されて海などへまかれるため、なくなってしまう点がデメリットです。ご遺骨を納骨できないことはもちろん、後から回収もできません。

そのため、粉骨したご遺骨の一部を保管するかどうかについて、実施前に検討しておく必要があります。

デメリット2.周囲の理解を得る必要がある

散骨によるデメリットの1つが、周囲の理解を得る必要がある点です。散骨をする際は、周囲の人(特にご親族)の了承を得る必要があります。しかし、新しいタイプの供養の方法であるため、ご親族から理解を得られない可能性もあるでしょう。また、一度散骨を行うと元に戻せないため、人によっては散骨を受け入れることが難しい場合もあるようです。

したがって、ご家族やご親戚の中に散骨を反対する方がいる場合は、気持ちよく実施できません。周囲に理解を得るためには、ご本人が元気なうちに、周りに話をしておくことが大切です。

デメリット3.故人様を偲ぶ機会が減る

散骨を行うことにより、故人様の存在を感じられる場所がなくなってしまうため、偲ぶ機会が減ってしまうこともデメリットです。納骨も行わないため、お墓参りもなくなります。お盆やお彼岸などの時期に、お墓へ行って花を手向けることもなくなるため、寂しく感じる方いるでしょう。

このように、散骨にはメリットだけでなくデメリットもあるため、ご家族やご親戚とよく話し合い、最善の方法を選択することが大切です。

供養の種類と相場

供養の種類は今回のテーマである散骨以外にも、一般墓や納骨堂、樹木葬、永代供養墓など、目的に応じてさまざまなものを選択できます。ただし、相場も異なるため、個々の事情に合わせた供養の方法を選ぶことが大切です。ここでは、おもな供養の種類と相場をご紹介します。

一般墓

お寺や霊園などに建てられる、昔ながらのお墓が一般墓です。石は昔から祈りの対象物とされており、根強い人気があります。石の種類は国産だけでなく、世界中のさまざまな石を選択することが可能です。また形も和型や洋型、デザイン型など、故人様やご家族の希望に沿うオリジナルのお墓を建てられることも人気の理由だといえるでしょう。

墓地の使用料と墓石代金を合わせた、一般墓の費用相場は150万円程度です。

なお、お墓の種類や歴史については、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご確認ください。

関連記事:お寺にお墓を持つメリット・デメリットとは?菩提寺と檀家、宗派ごとのお墓の特徴も紹介
関連記事:お墓の歴史を振り返る 昔のお墓の種類や形状、墓石などを解説

納骨堂

納骨堂とは個人だけでなく夫婦など、さまざまな単位でご遺骨を収蔵できる室内型のお墓のことです。広大な敷地を必要としないため、おもに都市部を中心に展開されることが多い供養施設といえます。

室内に設けられることが多く、お参りをする際、天候を気にする必要もなく、自分たちで掃除や管理をする必要もありません。寺院墓地の納骨堂の場合、住職が常駐しているため手厚い供養を受けられます。

納骨堂は、お寺のお堂などにスペースを借りるため、費用面では一般的なお墓に比べ安価であることが特徴です。納骨堂の費用相場は、骨壷の大きさや利用する年数などによって異なりますが、50万円前後が一般的です。ご家族のご遺骨をすべて納める納骨堂の場合、120万円程度になることもあります。安いものであれば5万円程度のものもあるでしょう。

なお、納骨と埋葬の違いは、以下の記事で解説していますので参考にしてみてください。

関連記事:納骨と埋葬は違う?!両者の違いと種類を紹介

樹木葬

樹木葬とは、お墓の代わりに自然の中で木々に囲まれた場所へご遺骨を埋葬する供養の方法です。木や植物に囲まれ、自然の中に還ることをコンセプトにしています。シンボルツリーを中心にしたお墓で、承継者を必要とせず比較的費用が安価であるため、近年、人気が高まっている状況です。

樹木葬のメリットとしては、自然に還すことができるため、環境に優しいことや、木々に囲まれた美しい場所で故人様を供養できる点が挙げられます。また、一般的なお墓よりも費用が安価であることや、管理費用がかからないこともメリットです。

一方、樹木葬を行う場所が限られていることや、埋葬後の管理が難しいことはデメリットとして挙げられます。

樹木葬の費用相場は、3万円から150万円程度で、一般的なお墓よりも安価であることが多いです。

なお樹木葬の詳細については、以下記事の内容もあわせてご確認ください。

関連記事:樹木葬とは?メリット・デメリットや費用感などを紹介

散骨による供養の種類と費用相場

前述した供養方法と比べ、散骨は承継者問題や管理費などがなく、もっとも価格を抑えられます。一般的な散骨の費用相場は、5万円〜30万円程度です。

また散骨の種類は、ご遺骨をまく場所によって、海にご遺骨をまく海洋散骨や、山にご遺骨をまく山林散骨などに分類されます。このほかにも、ヘリコプターで上空から行う空中散骨や、バルーン・人工衛星で宇宙へ向かう宇宙散骨などもあります。

ここでは、それぞれの種類と費用相場について確認しておきましょう。

海洋散骨

海洋散骨とは、故人様のご遺骨を海に散骨することです。海に散骨することにより、故人様が自然へと還り、安らかに眠ることができます。海洋散骨はご家族の手で実施するだけでなく代理で散骨するサービスもあるため、好きな方法を選択することが可能です。

ただし、海水浴場や漁場などの生活圏内には、ご遺骨をまくことはできません。船で沖から離れた場所まで行き、散骨を行うことが一般的です。そのため、専門業者へ依頼することが多くなるでしょう。

海洋散骨の費用相場は、5万円~25万円程度です。以下3つのタイプごとに金額が異なるため、目的や予算に応じて検討する必要があります。

1.ご家族のみで散骨を行う貸切乗船プラン

貸切乗船プランは、ご家族やご親戚以外に業者の担当者も乗船し、船上での散骨をサポートしてくれます。故人様との想い出の場所をクルージング先に追加したり、僧侶を手配して法要を行ったりできるなど、さまざまなオプションも用意されていることが多いです。同席するのは知り合いだけになるため、自由に気兼ねなく故人様を供養できます。

貸切乗船プランの費用相場は、25万円程度~が一般的です。

2.他のご家族と合同で乗船し散骨を行うプラン

他のご家族と合同で海洋散骨を行うプランもあります。他のご家族も一緒になることに抵抗がなければ、貸切乗船プランに比べ費用を安価に抑えることが可能です。また当日、業者の担当者も乗船するため、進行から管理まで任せられ安心して任せられます。

他のご家族と合同で散骨を行うプランの費用相場は、12万円~程度です。

3.業者に委託し散骨を代行してもらうプラン

散骨する海域が遠方であることや、健康上の理由などにより乗船できないといった理由がある場合には、業者に海洋散骨の代行を依頼することもできます。散骨の様子については、後日、記録写真や動画、また日時と正確な経緯度が記された散骨証明書を受け取ることにより、確認することが可能です。

業者に委託し、海洋散骨を代行してもらうプランの費用は、5万円~程度が相場です。

山林散骨

山林散骨とは、ご遺骨を山林にまく供養の方法です。海洋散骨とは異なり、ご遺骨をまく場所に細心の注意を払う必要があります。土地にご遺骨をまく行為であるため、他人の土地へ散骨することはできません。

山林散骨は、山登りが好きで「亡くなったら山に還りたい」という故人様の希望に添うことが可能です。ただし、海であれば誰にも迷惑をかけない海域で散骨を行えますが、山林散骨は土地の所有者から許可を得た場所でしか散骨はできません。そのため、山林散骨の業者へ依頼することが一般的です。

山林散骨は、業者に代行を委託した場合、立ち合いがないものであれば5万円~程度が相場といえます。完全プライベートで立ち合い可能なプランの場合は、20万円~程度が相場です。

空中散骨

空中散骨とは、ヘリコプターや飛行機をチャーターして、空から粉骨したご遺骨をまく方法や、バルーンにご遺骨を納めて成層圏まで飛ばす方法などもあります。飛行機からご遺骨を撒く場合には、街中ではなく海まで移動し、海上で散骨を行うことが一般的です。

また近年、上空から散骨する方法が人気を集めています。ヘリコプターで上空から自宅付近を経由し、散骨に問題ないところへ連れて行ってもらい実施する方法です。

空中散骨の費用相場は、20万円程度~が相場といえます。

宇宙葬

宇宙葬とは、ご遺骨やご遺灰を巨大なバルーンに格納し、空へ向けて飛ばす供養の方法です。成層圏に到達するとバルーンが割れ、空中に散骨される仕組みが一般的でしょう。そのため、厳密には宇宙まで到達していない点に留意する必要があります。

また、ご遺骨の入 ったカプセルをロケットに搭載し、宇宙へ飛ばす方法もあります。ただし、ロケットは頻繁に飛ばないため、長期間待たされる可能性が高いでしょう。ロケット以外であれば、人工衛星に乗せて打ち上げる方法もあります。打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に乗り、数か月から数年後に地球に再突入するようです。このとき、すべて燃え尽きるため、宇宙での散骨となります。10名〜100名程度の希望者を募り、同時に打ち上げられることが多いです。

バルーンによる宇宙葬の費用は、24万円~程度が相場です。ただし、一般的な宇宙葬の費用は数百万円から数千万円程度であるといわれています。また、宇宙葬は日本では法律で禁止されているため、現在は海外でのみでしか実施できません。

まとめ

散骨は、まだ一般的な供養方法とはいえませんが、近年はその種類も増えており、実施するご家族が増加傾向です。故人様やご家族の意向を反映した、供養の選択肢が増えているのは、よい傾向だといえるのではないでしょうか。

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