お寺にあるものは何?境内によくある建物などを紹介

2022.12.01

お寺に行くと、境内でさまざまな建物や施設が見られます。独特なスタイルのものが多いため、興味がある方も多いでしょう。

しかし、神社の境内にある建物について、それぞれがどのようなものなのか詳しく知っている方は少ないと思います。そこで今回は、お寺の境内によくある建物などについて解説するので、この機会に見識を深めてみてはいかがでしょう。

お寺にあるもの1.寺社紋(じしゃもん)

寺社紋とは、お寺の紋章のことです。お寺のシンボルのような、表示になっていることが多いでしょう。公家に関わりのある門跡寺院、武家が建立した菩提寺など、関係する氏族の家紋をそのまま寺紋として使用していたものが、寺社紋の由来といわれています。

例えば、東京の増上寺は、徳川家の菩提寺であるため「三つ葉葵紋」が寺社紋です。宗派を開いた僧侶の家紋を使用したり、寺院の山号を紋章化したり寺社紋もあります。また、曹洞宗永平寺の開祖である道元は、久我家の出身で永平寺の寺社紋も道元の生家の家紋である久我龍胆車紋を使用しています。

この他にも、境内の釘隠しに家紋を使用したり、手水鉢に家紋を入れたりすることも多いです。

お寺にあるもの2.七堂伽藍(しちどうがらん)

七堂伽藍は、お寺の主な7つのお堂や建物の総称です。または、7つのお堂が揃っているお寺をさします。時代や宗派によっても異なりますが、七堂とは門(三門)、本堂(金堂、仏殿)、塔、講堂(法堂)、鐘楼(しょうろう)、経蔵(きょうぞう)、僧房(本坊、食堂)のことです。

門(三門)

寺院における門といえば、南門や南大門をさすことが一般的です。鎌倉寺時代以降、寺院に「山号」を付けることが一般的になると、寺院の表門を総称して「山門」と呼ぶようになりました。

さらに、門の建築様式や役割の多様化により、寺院の門にはさまざまな名称が生まれます。
ここでは、代表的な門の名称を確認しておきましょう。

四脚門(しきゃくもん・よつあしもん)

四脚門は、一見すると柱(脚)が6本あるように見えますが、2本の門柱(本柱)とは別に、前後に控柱(ひかえばしら)が4本あることから「四脚門」と呼ばれています。なお、門柱には円柱、控柱には角柱が使われることが多いです。

棟門(むねもん)

棟門とは、2本の門柱(本柱)に切妻屋根を設けている門です。門を支える柱が少ないため、多くの場合、塀と連結されています。棟門はお寺の入り口や、別棟へ行く途中に設けられることも多いようです。

八脚門(はっきゃくもん・やつあしもん)

八脚門とは、門戸の左右にそれぞれ一間ずつ追加され、三間で門柱(本柱)が4本ある門のことです。4本ある門柱の前後に、控柱(ひかえばしら)が計8本あることから「八脚門」と呼ばれます。また追加された間(ま)には、仁王像を安置することが一般的です。

薬医門(やくいもん)

薬医門とは、門柱(本柱)の後ろに控柱が2本設けられた門の総称です。寺社だけではなく、城郭や邸宅にも多く使われています。医院において、門扉の隣に出入りが簡単な戸を設け、患者の出入りを楽にすることが目的だったそうです。

二重門(にじゅうもん)

二重門とは、2階建ての門で、1階部分にも屋根(下屋)を持つ門の総称です。門の中で、最も格式が高い門とされています。

鐘楼門(しょうろうもん)

鐘楼門とは、門の上に鐘楼堂を設けた門の総称です。階下の形状は楼門造りから、袴腰造りなど、いくつかの様式があります。

唐門(からもん)

唐門とは、唐破風を設けている門の総称で、向唐門(むかいからもん)と呼ばれる門屋根の側面に妻を持ち、唐破風が正面を向いている門や、平唐門(ひらからもん)という門屋根の両側面に唐破風がある門などがあります。

本堂(金堂、仏殿)

本堂とは、仏像を安置する建物です。かつて、仏教における崇拝・礼拝の対象は、仏塔でした。他に礼拝対象がなかったからです。その後、仏塔に代わる崇拝の対象として仏像が登場します。

当時の仏像は、お釈迦様の姿を像として現わすことを禁じられていました。お釈迦様は普通の人間とは違う存在であり、姿に現わすことはできないと考えられていたからです。その代わりとして「教え」を象徴する法輪や「悟り」の象徴である菩提樹を用いることで、お釈迦様を表現していました。仏塔の壁面や欄楯(らんじゅん)に描かれた物語が、崇拝対象とされていたそうです。

仏像は登場した当初、礼拝の対象ではなく、物語の一登場人物でした。その後、仏像にも意味や役割が言い伝えられ、お釈迦様のご遺骨や遺品を祀った仏塔から、お釈迦様自身の仏像へと崇拝・礼拝・信仰の対象が移行していったそうです。

やがて、独立した釈迦の像が作られるようになります。はじめは、仏塔の壁面にメインの彫刻として彫られていましたが、その後、単体の仏像も作られるようになりました。

仏像は、信者にとって非常に重要な信仰の対象だったため、現在のような仏像(本尊)を安置する建物が作られたそうです。これが本堂(金堂、仏殿)の原型といわれています。

お釈迦様が亡くった際、信者によってご遺骨が分けられ、舎利を安置する建造物が作られました。これが塔の起源です。

大きなお寺には、さまざまな塔があります。もともと塔は、サンスクリット語のストゥーパの音を写した、卒都婆・卒塔婆(そとば・そとうば)の略語です。ストゥーパとは、土を盛り上げたお墓のことで、仏教以前から存在していた土饅頭(どまんじゅう)の形をしたお墓のことを意味します。

法事などの際、お墓に立てる細長く薄い板である塔婆(卒塔婆)の起源もストゥーパです。両者を区別するために、建造物の塔は「塔」と呼び、お墓に立てる塔婆は「塔婆(板塔婆)・卒塔婆」と呼ばれています。

塔が建てられた当初から、信者にとっての礼拝・崇拝・信仰の対象でした。お釈迦様にゆかりのあるものとして、民衆の信仰対象としても広まりました。それまで民衆は、お寺にお布施をしたり、教えを説いてもらったりすることや、教えを守って生活するという形でのみ、仏教に関わってきました。しかし、塔が建てられるようになったことによって、仏塔崇拝という新しい形で、積極的に仏教に関わる機会を得たのです。

塔は徐々に発展していきましたが、初期は戒律で、出家者による仏塔供養が禁止されていました。そのため出家者は、仏塔とは関係なく、精舎と塔はまったく別ものだったそうです。それが徐々に融合して、寺院を形成していくことになります。

講堂(法堂)

講堂とは、お寺が経典の講義や仏教経典の説法をする建物のことです。通常は、金堂の後ろに建てられます。禅宗寺院ではおもに法堂、その他の宗派では講堂と呼ばれることが多い建物です。

鐘楼(しょうろう)

鐘楼とは、時を告げるために打つ、大型の梵鐘を吊るすために設けられた建物のことです。
釣鐘堂や鐘楼堂、鐘撞き堂、撞楼などと呼ばれる場合もあります。山門と鐘楼が一体化したものは鐘門、鼓楼(太鼓)と鐘楼が一体化したものは鐘鼓楼です。

経蔵(きょうぞう)

経蔵とは、仏教建築の書庫、倉庫のひとつで、経典や版木(はんぎ)などを保管するために建てられたもので重要な建物です。

僧房(本坊、食堂)

僧房とは、お寺の境内にある僧侶の居住空間となる建物です。現在では、近代的な建物になっていることが多く、昔ながらの僧房は少なくなっています。

お寺にあるもの3.境内によくあるもの

お寺に行くと必ずと言ってよいほど見かける、鳥居と参道、狛犬、手水舎について解説します。それぞれの建物に込められた意味を知ることで、お寺への感慨がより深まることでしょう。

鳥居

鳥居とは、神のいる神域と人が暮らす俗界を隔てる建物です。鳥居をくぐった先にある神社には、神がいる神域と考えられています。鳥居をくぐる際、立ち止まって一礼する風習は、神を敬う気持ちの表れといえるでしょう。

参道

参道とは、神社の入り口にあたる鳥居から続く道のことです。玉砂利が敷かれた参道のお寺もあります。参道は神域へつながる道であり、奥へ行くほど神の世界に近づくことを意味します。なお、参道の真ん中は神が通るといわれており、参拝者は参道の脇を歩くことがマナーです。

狛犬

狛犬とは、境内や参道の脇に設置されている像で、神域に入る参拝者の見張り役を担っています。神様の守護を司り、犬や狐、牛、猿といった動物をモチーフにした像があるなど、その姿は神社によってさまざまです。

手水舎(ちょうずや・てみずや)

手水舎は、神社を参拝する前に、手や口をすすぐ水場です。かつて、神社を参拝する際には、清浄であることが求められたため、人々は事前に川に入ることで、穢れを落とし心身を清めていました。手水舎は、その儀式を簡略化したものだといえるでしょう。

まとめ

お寺にある寺社紋やさまざまな建物は、もともとは別々に作られ、ひとつの敷地内に建てられるようになりました。時代ごとに変化しながら、現在のお寺の形へと変動を遂げています。

仏教は、現在でも非常にポピュラーな宗教です。各地で多くのお寺が見られ、気軽に参拝もできます。皆様がお寺に行くときには、どのようなことを考えるのでしょうか。

法事やお墓参りの際などに訪問するとき、少し周りを見渡すとそのお寺の歴史や成り立ち、お寺ごとの違いに気づくと思います。今回ご紹介した内容は、お寺にあるものや建物のほんの一部なので、興味がある方はさらに見識を深めてみるのもよいでしょう。